Microsoft Fabric の Power BI (Power BI ユーザー向け Microsoft Fabric)とは
Power BI は、Microsoft が提供する クラウド型のデータ可視化・レポート作成ツールです。従来の Power BI は単独のサービスとして用いられていましたが、Microsoft Fabric の一部としても利用できるようになりました。
まずこのセクションでは、Power BI の概要についてご紹介します。
※本記事では、Microsoft Fabric の一部としての Power BI を「Microsoft Fabric の Power BI」 、単独のツールとしての Power BI を「従来の Power BI」と呼称します。
Power BI とは
そもそも従来の Power BIとはどのようなサービスでしょうか。
Power BI とは、Microsoft が提供するクラウド型のデータの可視化やレポート作成に特化したサービスです。 Power BI を使うことで、グラフやダッシュボードを作成してデータを分析したり、売上、顧客データなどのレポートを作成して共有したりすることが可能です。
Power BI イメージ(参考:Microsoft)
Microsoft Fabric とは
では、Power BI がその一部となったMicrosoft Fabricとはどのようなサービスなのでしょうか。
Microsoft Fabric はデータの収集・処理・分析・可視化までを一元管理できる統合データ分析プラットフォームで、Power BI を含む以下の主要な機能があります。
Microsoft Fabric サービス一覧(参考:Microsoft)
- Data Factory:データの取り込み・変換・統合を行う ETL サービス。
- Data Engineering:Apache Spark を活用したデータ処理・分析のためのサービス。
- Data Warehouse:クラウド上で高速なクエリ処理ができるデータウェアハウスのサービス。
- Data Science:機械学習モデルの開発・運用を支援するサービス。
- Real-Time Intelligence:リアルタイムデータを処理・分析できるサービス。
- SQL Databases:データベースの管理や統合を行うサービス。
- Industry Solutions:業界ごとの特化型データソリューションを提供するサービス。
- Power BI:データの可視化やダッシュボード作成ができる BI サービス。
- OneLake: 統合データレイクのサービス
こうした機能は Microsoft Fabric の統合プラットフォーム上で連携しているため、データの収集から可視化・分析までをスムーズに行うことができます。
Microsoft Fabric の Power BI 特徴
Microsoft Fabric の登場により、Power BI はデータ管理基盤との統合が進み、より柔軟でスケーラブルなデータ分析が可能 になりました。
ここでは、主に従来の Power BI と Microsoft Fabric の Power BI の違いを比較しながら、 Microsoft Fabric で強化された Power BI の特徴を解説します。
多様なデータソースへのアクセス
従来の Power BI では、異なるデータソーからデータを取得する場合にデータの統合が煩雑になりがちという課題がありました。
しかし Microsoft Fabric では Data Warehouse、Lakehouse、Database などのデータ管理基盤が統合されており、Power BI から直接接続することができます。 そのため、異なる種類のデータを簡単に組み合わせて分析することが可能となっています。
例えば、以下のデータがそれぞれ格納されているとします。
- Data Warehouse(構造化データ) 例:各店舗の売上データ、顧客データなど
- Lakehouse(非構造化データ) 例:店内のカメラ映像や IoT センサーのログデータ
このデータを Power BIで組み合わせることで、「来店者の動き(センサーデータ)と売上データを組み合わせ、どのエリアの商品が売上につながりやすいかを分析」するといった、より高度なデータ活用が可能になります。
Direct Lake によるリアルタイム分析
Microsoft Fabric の OneLake には、データをインポートせずに直接読み込むことができる「Direct Lake」という機能があります。
通常、Power BI でデータを分析するには、データをインポート(コピー)して処理する必要があり、データをインポートする時間がかかっていました。
一方、 Microsoft Fabric の Power BI では Direct Lake を使うことでデータを即座に読み込んで分析できるようになり、以下のようなリアルタイム分析が可能になりました。
- 製造業のセンサーデータ分析(故障が発生する前に異常を検知することが可能です。)
- Web サイトのアクセスログ分析(リアルタイムでのユーザー行動を把握し、人気のある商品やページを分析することができます。)
データマートによるセルフサービス BI の強化
Power BI データマート(Power BI Datamart)とは、Power BI 内でデータの収集・統合・管理・分析を一元化することができるクラウドベースのデータストアです。
通常データ分析を行うには、データベースを用意し、ETL(データの抽出・変換・ロード)処理を行い、SQL でデータを操作する必要があります。 しかし、Power BI データマートを使うことで、こうした作業を Power BI 上でノーコードまたはローコードで簡単に実施することが可能です。
データマートイメージ(参考:Microsoft)
Power BI Premium または PPU ライセンスを保有している場合、 Microsoft Fabric の Power BI を利用せずとも、データマート自体は利用可能です。 Microsoft Fabric の Power BI を活用するメリットとして OneLake や Data Warehouse との統合がよりスムーズになります。
スケーラビリティとパフォーマンスの向上
従来の Power BI では、データ量が増えると処理速度が低下するというデメリットがありました。
Microsoft Fabric は、データ量が増えても自動でスケールすることができます。そのため、Power BI で扱うデータ量が増加したり、より複雑な分析を行ったりする場合でも、パフォーマンスを維持することができます。
また、 Microsoft Fabric の Data Engineering や Data Warehouse の機能を活用して事前にデータの整理や最適化を行うことで、Power BI での分析を高速化することも可能です。
自然言語による対話型データ探索
Build 2025で発表された「Ask Copilot in Power BI(Preview)」により、Power BI にフルスクリーンのCopilot画面が追加されました。「売上のトレンドは?」などの自然言語で、複数レポートを横断した検索・分析が可能になります。
従来の右ペイン型Copilotによる単一レポートへの質問機能から、ワークスペース全体への横断検索へと進化しています。
Fabric Data Agents連携
Power BI の Copilot 体験をさらに広げる仕組みとして、「Fabric Data Agents」が新たに利用可能になりました。
このエージェントを活用することで、OneLake 上の Lakehouse、Data Warehouse、KQL データベースといった複数のソースを横断し、自然言語でのデータアクセスが可能になります。
さらに Microsoft Copilot Studio と組み合わせれば、Power BI だけでなく Teams や Microsoft 365 Copilot との連携も実現し、対話型のレポート生成や自動処理の範囲が広がります。
データベースミラーリング活用
Azure SQL Database 向けのミラーリング機能はすでに一般提供(GA)されていますが、Build 2025では新たに SQL Server(2016–2025)および Azure SQL Managed Instance 向けの「Fabric Mirroring」機能(Preview)が発表されました。
これにより、オンプレミスのSQL Serverやマネージド環境からOneLakeへのリアルタイム複製が可能となり、ETL不要で最新運用データをそのままPower BIで分析できるようになります。
CDC技術によりデータ変更を検知し、自動でDeltaテーブルに変換します。
Microsoft Fabric の Power BI のはじめ方
このセクションでは、Microsoft Fabric で Power BI を使い始めるための基本情報をご紹介します。既存の Power BI ユーザーが Microsoft Fabric に移行する際のポイントについてもあわせて解説します。
利用に必要なアカウントと無料試用版
Microsoft Fabric を利用するには、Microsoft 365 のアカウントが必要です。アカウントをお持ちでない場合は、新たに作成する必要がありますが、すでにアカウントをお持ちの場合は、そのまま Microsoft Fabric にサインインして利用を開始できます。
なお、Microsoft Fabric を初めて利用する場合は、最初のアイテムを作成したタイミングで自動的に無料試用版が有効になります。
Power BI から Microsoft Fabric への移行
既に Power BI を利用している場合は、現在使用している Microsoft 365 アカウントでそのまま Microsoft Fabric にサインインすることで、引き続き Power BI の機能を利用できます。
ワークスペースやレポート、データセットなどの既存のコンテンツも自動的に引き継がれるため、特別な移行作業は不要です。これまでと同じ環境で、Microsoft Fabric 上の Power BI をスムーズに利用開始できます。
Microsoft Fabric の Power BI の使い方
ここでは、 Microsoft Fabric の Power BI の利用手順についてご紹介します。
今回は、Microsoft Fabric の Dataflows Gen2 を使ってデータを取り込み、Power BI でレポートを自動作成します。
手順の流れは次のとおりです。
- レイクハウスの作成
- Dataflows Gen2 でデータを取り込む
- セマンティックモデルとレポートの作成
※ 前提条件として、使用可能な Microsoft Fablic 上のワークスペースが必要です(詳細はこちらを参考にしてください)。
ステップ 1: レイクハウスの作成
レイクハウスは、データウェアハウス(DWH)とデータレイクの機能を統合したデータ管理基盤です。 ここではまずデータを 統合・保存するための基盤 を構築し、Power BI で活用できる形にするための準備をします。
- Microsoft Fabricを開きます。
MicrosoftFabric 画面 - 左側のメニュー > [ワークスペース] > 既存のワークスペースをクリックします。 ※ここでは、既存の workspacetest1 を選択します。
ワークスペース選択画面
- ワークスペースから、[新しい項目] をクリックします。
新しい項目選択画面 - [レイクハウス] を選択します。
Lakehouse 選択画面 - 名前を設定し(ここでは 「PublicHolidayLakehouse」 )、[作成] をクリックします。
Lakehouse 作成画面
ステップ 2: Dataflows Gen2 でデータを取り込む
ここでは分析したい csv ファイルを Microsoft Fabric にアップロードします。
- 作成したレイクハウス(ここでは「PublicHolidaysLakehouse」)から、「データの取得」 >「データフロー Gen2」を選択します。
データフロー Gen2 選択画面
- 「text ファイルまたは csv ファイルからインポート」を選びます。
インポート画面 - 「ファイルのアプロード」を選択して、アップロードする csv を選択したら、「次へ」を押します。
データソースへの接続画面 - 「作成」をクリックします。
データソース作成画面 - 「公開」をクリックします。
公開選択画面
ステップ 3: セマンティックモデルとレポートの作成
セマンティックモデルは、データをユーザーが理解しやすい形で整理し、分析に適した構造を提供する仕組みのことです。 ここではセマンティックモデルを作成してデータの関係を整理し、Power BI で可視化します。
- レイクハウス上(ここでは「PublicHolidaysLakehouse」)で、「新しいセマンティックモデル」を選択します。
新しいセマンティックモデル画面 - 新しいセマンティックモデル画面が開くので、モデル名等の必要事項を確認し、「確認」をクリックします。(ここでは、PublicHolidaymodel1)
新しいセマンティックモデル確認画面 - ワークスペース(ここでは「Workspacetest1」)に戻り、作成したセマンティックモデル(ここでは、「PublicHolidaymodel1」)の三点リーダー(・・・)をクリックします。
三点リーダークリック画面 - 「レポートを自動作成する」をクリックします。
レポート自動作成画面 - レポートが作成されました。
レポート画面
Microsoft Fabric の Power BI の料金
Microsoft Fabric で Power BI を利用するには、利用目的に応じた複数の選択肢があります。ここでは、それぞれのプランの特徴を解説します。
Microsoft Fabric の Power BI 料金プラン
プランには、以下のとおり Power BI Free(無料アカウント)、Fabric 容量予約、Fabric 容量(従量課金制)があります。
| 機能 | Power BI Free(無料) | Fabric 容量予約 | Fabric 容量(従量課金) |
|---|---|---|---|
料金 | ¥0 | 変動制(予約型課金) | 変動制(使用量に応じた課金) |
Power BI Desktop でのレポート作成 | 〇 | 〇 | 〇 |
レポートの公開・共有 | ✖ | Power BI Pro ライセンスが必要 | Power BI Pro ライセンスが必要 |
高度な AI | ✖ | 〇 | 〇 |
高度なデータフロー | ✖ | 〇 | 〇 |
高度なデータマート | ✖ | 〇 | 〇 |
XMLA エンドポイントの読み取り/書き込み | ✖ | 〇 | 〇 |
OneLake ストレージ | ✖ | 〇 | 〇 |
ユーザーごとのライセンスなしで Power BI コンテンツを使用 | ✖ | F64 以上 | F64 以上 |
Copilot in Fabric(AI 支援機能) | ✖ | F64 以上 | F64 以上 |
最大ストレージ(ネイティブストレージ) | ✖ | 100 TB(Power BI ストレージ) | 100 TB(Power BI ストレージ) |
データのセキュリティと暗号化 | 〇 | 〇 | 〇 |
プランの選択基準
以下の内容を参考に、利用目的に合ったプランを選択してください。
基本機能を利用したい場合
Power BI を試しに使ってみたい場合は、「Power BI Free(無料アカウント)」を利用するのが最適です。自分用のレポート作成や閲覧が可能なので、基本的な機能を学ぶには十分です。
企業向けで、大規模なデータ処理や高度な AI 分析を行いたい場合
「Fabric 容量予約」または 「Fabric 容量(従量課金制)」が適しています。大量のデータ処理やストレージ管理を行うことができ、高度な AI、データフロー、データマート機能 が利用可能なので、企業での利用に最適です。
Microsoft Fabric の無料試用版について
Microsoft Fabric では、新規ユーザー向けに60 日間の無料試用版を提供しており、一部の機能を試すことができます。
無料試用版では、Microsoft Fabric の主要な機能が利用可能ですが、一定の制限があるため、本格的な運用には有料の Fabric 容量が必要になります。
※ 本記事に記載されている情報は、2025 年 3 月時点の情報です。変動する可能性があるため、最新の情報については、公式ページで確認してください。
Microsoft Fabric の Power BI ユースケース
このセクションでは Microsoft Fabric の Power BI について、具体的な活用例をいくつかご紹介します。
Data Warehouse のデータを Power BI で可視化する
Microsoft Fabric の Data Warehouse は、SQL ベースのデータ管理システムで、構造化データを効率的に保存・分析することができるサービスです。
Microsoft Fabric の Data Warehouse に売上・顧客・在庫などの整理されたデータ を保存し、Power BI からこのデータに接続することで、売上推移レポート・顧客分析ダッシュボード・在庫管理レポート などを作成することができます。
活用例
- 売上の増減をグラフ化
- 顧客ごとの購入傾向を分析
- 在庫の状況をリアルタイムでチェック
【関連記事】
【Microsoft Fabric】Data Warehouse とは? 統合データ分析プラットフォームの中核機能を徹底解説
レイクハウスのデータを Power BI で分析する
Microsoft Fabric のレイクハウスは、構造化データ、半構造化データ、非構造化データなど、様々な形式のデータを格納することができるサービスです。
Power BI からレイクハウスに接続することで、ログ・SNS 投稿・画像などの多様なデータを分析に活用することができます。
活用例
- Web ログと売上データからユーザーの行動と売上の関係を分析する。
- SNS 投稿と商品データからトレンド分析とマーケティング戦略を立てる。
- 画像データと在庫情報から店舗ごとの陳列状況と売上の関係を可視化する。
【関連記事】
【Microsoft Fabric】OneLake とは?統合データレイクで実現する次世代データ分析基盤を解説
データマートを活用したセルフサービス BI の実践
Microsoft Fabric のデータマートとは、ユーザーが SQL やプログラミングなしで、Power BI を使ってデータを探索・分析できる環境のことです。
データマートを活用することで、プログラミングなしでデータを整理し、Power BI で分析することができます。そのため、マーケティング担当者や営業担当者も、IT 部門に頼らずにデータを活用することが可能です。
活用例
- マーケティング部門でキャンペーンの効果を分析する
- 営業チームが顧客セグメントごとの売上を比較する
- 経営層が 最新の財務データを自分でチェックする
Direct Lake を使用したリアルタイムダッシュボードの構築
Power BI の Direct Lake モードを使うと、 Microsoft Fabric の OneLake に保存されている最新データを、インポートなしでそのまま分析することができます。
そのため、 Microsoft Fabric の OneLake にあるデータをリアルタイムに近い形で分析することができるので、データの更新を待たずに最新の状況の把握が可能です。
活用例
- 製造業で、センサーのデータをリアルタイム監視
- 小売業で、最新の売上・在庫状況を即時把握
- 金融業で、市場データの動きをリアルタイム分析
まとめ
本記事では、 Microsoft Fabric の Power BI について、その概要、Power BI ユーザーが Microsoft Fabric を活用するメリット、そして具体的な活用方法などについて解説してきました。
Microsoft Fabric は、Power BI を含むデータ分析に必要なすべての機能を統合したプラットフォーム です。 Microsoft Fabric には、Data Warehouse、Lakehouse などのデータ管理機能 が含まれており、Power BI を連携させることで、より大規模で複雑なデータ分析が可能になります。さらに、Direct Lake モードを活用すれば、リアルタイムに近い形でデータの可視化も実現することができます。
Microsoft Fabric を活用することで、Power BI ユーザーは、より多様なデータソースにアクセスし、リアルタイム分析やセルフサービス BI を強化することができるようになるでしょう。
ぜひ Power BI と Microsoft Fabric を活用して、より高度なデータ分析を実現してみてください。本記事が、 Microsoft Fabric 活用の第一歩となり、皆様のデータ分析をより強力なものにする手助けになれば幸いです。
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