Azure Stack HCI OSとは?
Azure Stack HCI OSは、マイクロソフトが提供するハイパーコンバージドインフラ(HCI)向けのオペレーティングシステムであり、現在はAzure Localの中核的なコンポーネントのひとつとして提供されています。
このシステムは、オンプレミスのサーバー環境とAzureクラウドを連携させ、企業が抱えるITインフラの課題を解決するために設計されています。
現在多くの企業では、オンプレミス環境の運用が複雑でコストがかさんだり、クラウドとの連携がうまくいかない、またビジネスの成長に合わせた拡張が難しいといった問題に直面しています。
Azure Stack HCI OSはこうした課題を解消するサービスとして注目されています。このシステムを使えば、オンプレミスの環境をクラウドとスムーズに統合し、より効率的でスケーラブルな運用を実現できます。特にAzure Localの一部となったことで、Azureサービスとのシームレスな連携・統合管理の強化・セキュリティの向上などの機能も加わりました。
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Azure localイメージ
クラウドとオンプレミスの利点を組み合わせた、次世代のインフラ基盤であるAzure Stack HCI OS について、Azure Localの一部としての新たな位置づけも含め、解説していきます。
HCIとは?
Azure Stack HCI OSは、Azure Localの一部であるハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)向けの専用オペレーティングシステムですが、そもそもハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)とは何でしょうか。
ここでは、Azure Localを理解する上で必要な前提知識についてご説明します。
3-Tier型インフラストラクチャの問題点
企業や組織が情報システムを運用するために必要な基盤を設計し、実際に構築することをITインフラ構築と言います。
従来はITインフラ構築において、3-Tier型インフラストラクチャという形態が採られていました。この構成では、サーバー、ストレージ、ネットワークという要素を個別に設計し、それぞれに専用のハードウェアを用いることで高性能を実現していました。
しかし、以下のような課題がありました。
- 複雑な管理:それぞれ異なるベンダーや技術を利用するため、運用が複雑になる。
- 高コストストレージ専用機器(SANなど)や高性能なネットワーク機器の導入・運用コストがかかる。
- 拡張性の制約:リソースの拡張が段階的で、特定の要素のみの変更(例:ストレージだけ増やしたい)が柔軟に行えない。
- パフォーマンスのボトルネック:サーバーとストレージ間のデータ通信がネットワーク経由で行われるため、遅延が発生する場合がある。
上記を解決するのがHCIです。
HCIの登場と特徴
HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)は、3-Tier型インフラストラクチャの課題を解消するために開発されました。
HCIでは、サーバー、ストレージ、ネットワークを統合し、ソフトウェアで一元的に制御する仕組みが採用されているため、以下のような特徴があります。
- シンプルな管理:従来のように複数の管理ツールを使う必要がなく、一つのインターフェースで全体を管理できます。
- 柔軟な拡張性:必要なリソースを追加するだけで、システム全体を拡張できます。
- コスト削減:専用ハードウェアの代わりに汎用的なサーバーを使用するため、初期費用と運用費用を削減することができます。
- 高いパフォーマンス:ストレージがサーバー内に統合されているため、データ通信の距離が短縮され、遅延が減少します。
Azure Stack HCI の概要
ここでは、Azure Stack HCI OSの概要についてご紹介します。
Azure Local構造イメージ(参考:マイクロソフト)
Azure Stack HCI OSの定義
Azure Stack HCI OSは、Microsoftが提供するハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)を採用した専用オペレーティングシステムです。
オンプレミス環境におけるAzureクラウドサービスの利用を可能にするサービスとして、仮想化・スケールアウトストレージ・ネットワーク管理・Azureとの統合を効率的に実現することができます。
Azure Stack HCI は従来独立したAzureのサービスでしたが、現在ではAzure Localというサービスの一部として提供されています。
Azure Localについて
Azure Localは、Microsoftが提供する分散インフラストラクチャソリューションで、オンプレミス環境にAzureのクラウド機能を拡張できる仕組みです。主に、以下の要素から構成されています。
- Azure Stack HCI OS
Azure Localの基盤を支えるHCI向け専用オペレーティングシステムです。この記事で詳しく紹介していきます。 - AKS enabled by Azure Arc
Azure Kubernetes Service(AKS)を、Azure Arcを介してオンプレミスやエッジ環境で利用できるようにする機能です。
【関連記事】
➡️Azure Arcとは?ハイブリッド/マルチクラウド環境の統合管理機能を解説 - Azure Virtual Desktop(AVD)
オンプレミスでの仮想デスクトップを運用することができます。 - Azureクラウドサービス
Azureのクラウド機能と密接に統合されており、バックアップ、セキュリティ、監視などのサービスを活用することができます。
これらの要素を組み合わせることで、Azure Localはオンプレミス環境とクラウドの強みを融合し、柔軟かつ効率的なITインフラの構築を可能にします。
Azure Stack HCI OSの主要技術と構成要素
Azure Stack HCI OSは、ソフトウェア層の技術を指し、物理的なサーバーやストレージ、ネットワーク機器で構成されるハードウェア層と、これらを統合して高可用性やスケーラビリティを実現するクラスター層を制御・管理する役割を果たします。

Azure Stack HCI OS構成イメージ
ハードウェア層
Azure Stack HCIは、Microsoft認定のハードウェア上で動作します。この層は、計算リソース(CPU、メモリ)、ストレージ(HDD/SSD)、ネットワーク(NIC、スイッチ)を提供し、クラスター層やソフトウェア層を支える基盤です。
クラスター層
複数のノードをクラスターとして統合し、リソースを一元管理することで、以下の機能を提供します。
- 高可用性: 障害発生時に他のノードへ自動的に切り替え、継続的なサービスを保証。
- スケーラビリティ: 必要に応じてノードを追加することで、システム全体を拡張可能。
- 分散ストレージ: Storage Spaces Direct(S2D)を利用して、ノード間でデータを分散しつつ冗長性を確保。
ソフトウェア層 (Azure Stack HCI OS)
以下の主要技術により構成されます。
Hyper-V:仮想化基盤
Hyper-Vは、Azure Stack HCIで使用可能な仮想化技術で、1台の物理サーバーを複数の仮想的なサーバーに分けて使うことができます。この仕組みによって、サーバーの能力を効率よく活用し、異なる業務システムをそれぞれ分けて動かすことができます。
例:
企業内で顧客管理システムと在庫管理システムを別々の仮想マシンに分けて運用することで、互いの干渉を防ぎつつ効率的に利用することができるようになります。
Storage Spaces Direct:分散ストレージ
複数のサーバー内にあるストレージをまとめて1つの仮想的な共有ストレージとして使うことができる技術です。また同じデータを複数のサーバーに分散して保存するため、1台のサーバーやディスクに障害が発生しても、他のサーバーからデータを取得して運用を継続することができます。
例:
3台のサーバーでS2D(Windows Server)を使ってストレージを構成した場合:
- サーバー1、サーバー2、サーバー3にはそれぞれ複数の物理ディスク(HDDやSSD)が搭載されています。S2Dはあたかもこの3つを1つの共有ストレージ空間として提供します。
- データファイル「A」を保存する場合、S2Dはファイルを以下のように複数のサーバーに分散して保存します。
- サーバー1: データの一部を保存
- サーバー2: データの一部を保存
- サーバー3: データのコピーを保存
そのため、サーバー2が故障しても、サーバー1とサーバー3に保存されたデータを活用して業務を継続することができます。
Software-Defined Networking(SDN):ネットワーク仮想化
SDNは、ネットワークを仮想化してソフトウェアで管理する技術です。物理的なネットワークの制約を受けないので、必要に応じてネットワークの設定を柔軟に変更することができます。
例:
1つのサーバーで以下のように設定することができます。
- 社内システム(社内だけがアクセス可能)
- 外部公開用ウェブアプリ(インターネットからアクセス可能)
二つのシステムを同じ環境で運用しつつ、それぞれの通信を完全に分離してセキュリティを確保することが可能です。
Azure Stack HCI OSの特徴
ここではAzure Stack HCI OSの特徴についてご紹介します。
併せて、Azure Localの一部となったことで追加された特徴もまとめています。
HCI環境向けに特化した設計
Azure Stack HCI OSは、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)環境で最大限のパフォーマンスを発揮できるように以下の機能により設計されています。
- 仮想化
Hyper-Vを活用して、複数の仮想マシンを柔軟に運用することができます。 - 分散ストレージ
Storage Spaces Direct(記憶域スペース ダイレクト)を使って、データを複数のサーバーに分散して保存することにより、高い可用性とパフォーマンスを実現します。 - ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)
ネットワークをソフトウェアで効率的に管理し、セキュリティも強化されています。
統合された管理ツール

Windows Admin Centerイメージ(参考:Microsoft)
Azure Stack HCI OSでは、管理作業を効率化するために以下のツールを活用できます。
- Azure Portal:クラウド上でオンプレミス環境も含めたすべてのシステムを一元管理できます。
- Windows Admin Center:ローカル環境での詳細な設定や操作が可能です。専門的なタスクやカスタマイズが必要な場合に便利です。
- 自動アップデート:ソフトウェアやドライバーをまとめて更新でき、最新の状態を簡単に維持することができます。
- セキュリティ:Azure Stack HCI OS は、オンプレミス環境においても以下のようにクラウドレベルの強力なセキュリティを提供します。
- セキュアな基盤:デバイスの起動時に信頼できるソフトウェアのみを許可するセキュアブートや、暗号化キーを安全に保管するTPM(トラステッドプラットフォームモジュール)を使用し、ハードウェアレベルでの安全性を確保します。
- データの保護:データを守るための強力な仕組みとして、保存データを暗号化するBitLockerや、ネットワークでのデータ送受信を暗号化するSMB暗号化を利用することができます。
Azureクラウドとの統合
Azure Stack HCI OSは、次のように、Azureの機能をローカル環境でも活用できる仕組みを提供します。
- Azure Arcの活用:Azure Kubernetes Service(AKS)やAzure Virtual Desktop(AVD)をオンプレミス環境で使用可能です。
- スムーズな連携:Azure MonitorやAzure BackupなどのAzureサービスを簡単に統合。ローカルのシステムもクラウドと同様に管理・活用することが可能です。
Azure Localの一部となったことで追加された特徴
Azure Stack HCI OSは、Azure Localの一部となることで、クラウドとの連携がさらに強化され、以下のような新たな特徴が追加されました。
- Azure Localの一部として、クラウドの利便性をオンプレミスでも活用
- Azure PortalやAPIを使って仮想マシンやストレージを管理
- Azure Resource Manager(ARM)テンプレートで簡単に設定やスケーリングを行う
Microsoft Defender for Cloudの利用
Azure Localの一部になったことで、Azure Stack HCI OSはAzure Arcによって完全にAzureと統合され、次のようなMicrosoft Defender for Cloudの機能が利用可能になりました。
- セキュリティベースラインの適用
Microsoft Defender for Cloudは、Azure Stack HCI OSのセキュリティ設定を自動的にベースラインに沿って監視し、脅威を検出して通知します。 - Azure Portalからの管理
Defender for Cloudの脅威検出やセキュリティレポートを、Azure Portalを通じて管理することができます。

Microsoft Defender for Cloudイメージ(参考:Microsoft)
Azure Stack HCI OSの導入手順
ここでは、Azure Stack HCIの導入手順を紹介していきます。導入手順のステップは以下のとおりです。
- ステップ1: 対象ハードウェアの準備
- ステップ2: Azure Stack HCIで使用するOSのセットアップ
- ステップ3: Azure Stack HCIをデプロイ
ステップ1: 対象ハードウェアの準備
Azure Stack HCIを実行するには、Microsoftが認定したハードウェアが必要です。このステップでは、対応ハードウェアの準備を行います。
- Azureポータルにアクセスし、Azureアカウントでサインインします。
Azureポータル画面
- Azureポータル上側の検索バーで"azure local"と入力し「Azure Local」をクリックします。

AzureLocal選択画面
- 「1. ハードウェアの注文」→「カタログを調べる」をクリックします。

カタログを調べる画面
- 「Azure Local catalog」をクリックします。

AzureLocalcatalog画面
- カタログから導入するハードウェアを検索してください。

ハードウェア選択画面
ステップ2: Azure Stack HCIで使用するOSのセットアップ
対象ハードウェアにAzure Stack HCI OSをインストールし、初期構成を行います。
- 「2. マシンの準備」→「ソフトウェアのダウンロード」をクリックします。

ソフトウェアのダウンロード選択画面
- 「Azure Local ソフトウェアをダウンロードする」画面で適切な設定をします。
「ソフトウェアのダウンロード」をクリックします。
ソフトウェアのダウンロード画面
- ダウンロードしたisoファイルを対象の機器にマウント、起動させインストーラ画面に沿ってインストールします。
※注意 : 本ソフトウェアはOSイメージとなっていますのでハードウェアにすでに別のOSがインストールされている場合は上書きされデータが削除されます。

isoファイル画面
ステップ3: Azure Stack HCIをデプロイ
OSがインストールされたら、Azure Stack HCIクラスターを構成し、Azureに登録します。
- 「Azure Localをデプロイする」→「インスタンスの作成」をクリックします。

インスタンスの作成画面 - 作成ウィザードに沿ってデプロイを実施します。

作成ウィザード画面
Azure Stack HCI OSの活用場面
Azure Stack HCI OSは、以下のような幅広い活用場面で利用されています。
仮想デスクトップ基盤(VDI)
Azure Stack HCI OSは、仮想デスクトップ環境を効率的に構築・運用するための基盤として適しています。特にリモートワークが普及する中で、セキュリティを確保しつつ、快適な操作性を提供します。
実際の利用例
- リモートワークの従業員が安全にアクセスできる仮想デスクトップを整備。
- 医療機関や金融業界で、機密データを保護しながら仮想デスクトップを提供。
データベース環境
Azure Stack HCI OSは、高い安定性と速さが必要なデータベースの運用にも利用できます。特に、SQL Serverを使う重要なシステムに向いています。
実際の利用例
- 大量のデータを扱う販売管理システムの運用を支援。
- 金融業界や小売業界でのリアルタイムなデータ処理と管理を実現。
エッジコンピューティング
工場や店舗など、データが発生する現場でリアルタイムの処理が求められる場合に有効です。Azure Stack HCI OSは、クラウドに頼らず現場での迅速なデータ分析と処理を可能にします。
実際の利用例
- 工場内のセンサーから取得したデータを即座に分析して、生産効率を向上。
- 小売店舗で売上や在庫データをリアルタイムに処理し、迅速な意思決定を支援。
Azure Stack HCI OSの料金
Azure Stack HCI OSはAzure Localの基盤として動作するOSであり、料金はAzure Localのホストサービス料金に統合されています。そのためAzure Stack HCI OSを利用する際に別途料金を支払う必要はありません。
Azure Local料金内での主要項目
Azure Localの料金体系は以下のとおりです。
ホストサービス料金
- 月額 ¥1,520/物理コア(従量課金制)。
- Azure Hybrid Benefitを適用すると、この料金が無料になります。
無料トライアル期間
Azure Localとして登録した場合、最初の60日間は無料で利用できます。この期間中にAzure Stack HCI OSも含め、Azure Localの全機能を試すことが可能です。
※ 本記事に記載されている情報は、2024年12月時点の情報です。変動する可能性があるため、最新の情報については、公式ページで確認してください。
まとめ
本記事では、Azure Stack HCI OSの基本概念、特徴、ライセンス、導入手順、活用事例まで網羅的に解説しました。
Azure Stack HCI OSは、オンプレミス環境にAzureのクラウド技術を取り入れるための基盤であり、Azure Localの重要なコンポーネントです。従来のデータセンターにおけるハードウェア管理の複雑さを解消しながら、クラウドの柔軟性を組み合わせた新しい仕組みを提供します。
Azure Stack HCI OSの利用は、ビジネス成長、コスト最適化、運用効率化に大きく寄与し、組織のIT基盤進化を力強く後押しするでしょう。
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