Azure Kubernetes Service (AKS)とは
Azure Kubernetes Service (AKS) は、Microsoft Azure が提供するフルマネージドの Kubernetes サービスです。
Kubernetes (クバネティス、または K8s)は、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ・スケーリング・運用を効率よく行うためのオープンソースツールですが、その運用には通常複雑な設定や管理が伴います。
AKS を使うことで、開発者はアプリケーションのデプロイや管理を簡単に行うことができるようになり、インフラの細かい管理を気にする必要がなくなります。 さらに、Azure のセキュリティやスケーリング機能と連携して、アプリケーションをより安全で安定した環境で運用することもできます。
AKS イメージ(参考:Microsoft)
コンテナとは
コンテナは、アプリケーションを実行するための軽量な仮想化技術の一種で、必要なコード、ライブラリ、設定などを 1 つの単位にまとめたものです。
たとえば、 写真編集アプリを作成した場合、アプリを作成した作成者のパソコンにはアプリに必要なツールや設定(特定の Python やライブラリ)が入っているためアプリが問題なく動くでしょう。 しかしサーバーや他の人のパソコンでは、必要なツールや設定が足りず、アプリが動かないことがあるかもしれません。
そのような場合にコンテナという技術が役立ちます。
コンテナは「アプリが動くために必要なすべて(アプリ本体、必要な Python のバージョン、追加のツールやライブラリなど)」を 1 つの「箱」に詰め込む技術です。 この箱(コンテナ)を、他の人の PC やサーバーに送れば、その中身をそのまま使うことができるので、環境の違いを気にせずにアプリを動かすことができます。
コンテナは起動が速く、リソースの消費も少ないため、効率的にアプリケーションを管理するためにも役立ちます。
以上のようにコンテナは便利なパッケージですが、コンテナ単体ではアプリケーションを動かすための小さな箱に過ぎません。
Kubernetes とは
そのためコンテナを動かすための総合的な管理ツールが必要となりますが、そのツールが Kubernetes です。
Kubernetes の機能は次のとおりです。
- コンテナのデプロイ どこでどのコンテナを動かすかを決めて、アプリケーションを実行します。
- スケーリング 必要に応じてコンテナの数を増やしたり減らしたりします。
- 自動回復 もしコンテナが停止した場合、自動的に再起動したり、新しいコンテナを作成したりします。
Kubernetes は複数のコンテナを効率よく動かすためのシステムなので、オーケストレーションツールとも呼ばれます。
これはオーケストラで指揮者が各楽器を調整し、演奏がスムーズに進むようにするのと同じように、Kubernetes もシステム全体が問題なく動作するよう複数のコンテナを自動で管理・調整するところに由来します。
Azure Kubernetes Service(AKS)の仕組み
では、Kubernetes の仕組みはどのようになっているのでしょうか。 AKS に限らず基本的な Kubernetes システムで以下の図のような構成が採用されています。
AKS のイメージ(参考:Microsoft)
ここで登場する構成要素は以下のとおりです。
ノード (Node)
ノードは、Kubernetes クラスター内でコンテナを実行する物理または仮想マシンのことです。 上記図の中央に描かれている「Kubernetes ノード 0」「Kubernetes ノード 1」「Kubernetes ノード N」などがノードです。
コンテナは単体では箱にすぎませんが物理的な計算資源(CPU、メモリ、ストレージ)を使うことで動作します。この計算資源を提供するのが「ノード(物理サーバーや仮想マシン)」です。
ポッド (Pod)
ポッドは、Kubernetes における最小の実行単位です。 上記図のようにポッドは 1 つまたは複数のコンテナを含んでいて、同じネットワーク設定(IP アドレス)でグループ化されて実行されます。
大規模なシステムでは、数十、数百のコンテナを運用することになるので手動で管理するのは非現実的です。そのためコンテナをまとめてグループ化し、自動的に配置・管理する単位が「ポッド」です。
コントロールプレーン
コントロールプレーンは、ノードやポッドなどのリソースを効率的に管理する役割を果たします。「指揮塔」のように全体の管理や指示を行い、どのノードでコンテナを動かすかを決めたり、スケーリングや障害対応などをコントロールしたりします。
クラスター (Cluster)
Kubernetes クラスターとは、Kubernetes が管理するコンテナの集合体を動かすために必要なリソースの集合を指します。
上記の図でいうと全体がクラスターを表しており、「コントロールプレーン」「すべてのノード」「ノード内のポッド」「ネットワーク」を含む一連のシステムが、Kubernetes クラスターとして機能しています。
Azure Kubernetes Service (AKS)の特徴
AKS は Microsoft Azure が提供するフルマネージドの Kubernetes サービスですが、Kubernetes というサービス自体は様々な企業で提供されています。
では AKS が他の Kubernetes サービスと比べて持っているメリットは何でしょうか。ここでは AKS の特徴についてご紹介します。
Azure による運用管理で、管理負担を大幅に削減
AKS はフルマネージドサービスであるため、Kubernetes クラスターのインフラ部分(ノードの管理やアップグレードなど)を Azure が管理します。
他のサービスでもマネージドサービスはありますが、AKS は特にインフラ管理の簡素化が進んでおり、ユーザーはほとんど管理を気にすることなく利用することができます。
Azure の他のサービスとのシームレスな統合
AKS はAzure の他のサービスとスムーズに統合することができます。例えば、Azure DevOps と連携して CI/CD パイプラインを作成したり、Azure Monitor でアプリケーションの監視を行ったりすることも可能です。
特に、Microsoft 製品を多く使っている企業にとっては、Microsoft Entra ID や他の Microsoft ツールとの親和性も高いため、AKS を使うと非常に便利です。
スケーラビリティと高可用性
AKS では、アプリケーションの負荷に応じてノードやコンテナのスケールを簡単に設定できるため、需要の変動に迅速に対応することが可能です。
他のサービスでもスケーリング機能を提供していますが、AKS は特にその設定が直感的なので簡単に使用することができます。
セキュリティ機能の強化
AKS では Microsoft Defender for Cloud や Azure Policy を利用したセキュリティ監視や Microsoft Entra ID によるアクセス管理を行うことも可能です。
Azure 環境全体での統合が進んでいることから、他の Kubernetes サービスよりもセキュリティ管理を一貫して行いやすい点も AKS の特徴です。
Azure Kubernetes Service(AKS)の導入・構築手順
このセクションでは、AKS の導入手順としてクラスターの作成についてご紹介します。
AKS クラスターは、Azure CLI や Azure ポータルから数コマンド・数クリックで作成することができます。ここではAzure ポータルを使ったクラスターの作成手順を紹介します。
クラスターの作成手順
- Azure ポータル画面の「リソースの作成」で「AKS」で検索し、「Azure Kubernetes Service(AKS)」をクリックします。
AKS 選択画面 - 「Kubernetes クラスターを作成」画面、「基本」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
基本タブ画面 - 「ノードプール」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
ノードプールタブ画面 - 「ネットワーク」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
ネットワークタブ画面 - 「結合」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
結合タブ画面 - 「監視中」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
監視中タブ画面 - 「セキュリティ」タブで適切な設定をします。 「次へ」をクリックします。
セキュリティタブ画面 - 「詳細」タブで適切な設定をします。 「確認および作成」をクリックします。
詳細タブ画面 - 「レビューと作成」タブで適切な設定がされていることを確認します。 「作成」をクリックすると AKS クラスターのデプロイが開始されます。
レビューと作成タブ画面 - クラスターの作成が完了した後 クラスターの作成が完了すると、Azure ポータルの「Kubernetes サービス」から作成した AKS クラスターを確認できます。 その後、kubectl(Kubernetes クラスターをコマンドで操作するためのツール)を使って クラスターに接続し、Kubernetes のマニフェストを適用してアプリケーションをデプロイし、ワークロードを稼働させます。 これで AKS クラスターの準備が完了です。 必要に応じて スケーリングやネットワーク設定を行い、適切な設定を施して運用を開始しましょう。
Azure Kubernetes Service (AKS)と他のマネージド Kubernetes サービスとの比較
Azure では AKS の他にも Kubernetes サービスが提供されています。ではそれぞれの違いはどこにあるのでしょうか。
ここでは他のマネージド Kubernetes サービスとの比較についてご紹介します。
Azure Container Instances (ACI)
Azure Container Instances (ACI)は、軽量で一時的なコンテナ実行に最適なサービスです。 サーバーレスなので、設定や管理が少なく、コストも抑えやすいというメリットがあります。簡単なコンテナをすぐに実行したいときに便利です。
Azure Red Hat OpenShift
Azure Red Hat OpenShift (ARO)は、AKS にさらに便利な機能やツールを追加したサービスです。 エンタープライズ(大規模な企業)向けに設計されていて、使いやすい GUI ベースの管理コンソールやより強力なセキュリティや CI/CD ツールが組み込まれています。
OpenShift のエコシステムを活用したい場合で高いセキュリティや運用効率が求められる場合に向いています。
Azure Kubernetes Service との比較
以下のようにそれぞれのサービスは使いやすさと機能のバランスが異なるため、用途に合わせて選ぶのがポイントです。
- ACI: 最も簡単で軽量。単発や短期間の一時的なジョブに適している。
- AKS: 汎用的で柔軟性が高い。中規模から大規模のアプリケーションに適している。
- ARO: OpenShift のエコシステムを活用したいエンタープライズ向け。大規模で複雑なシステムを運用する場合に最適。
Azure Kubernetes Service (AKS)の料金体系
ここでは AKS の料金体系についてご紹介します。
AKS では以下の「クラスター管理料金」と「リソース使用料金」から料金が計算されます。
クラスター管理料金
AKS では、Kubernetes クラスターを管理するための料金が発生します。 この部分は「クラスター管理料金」として、以下のFree・Standard・Premiumの3つの料金プランに分かれています。
Free レベル
- 無料で使用でき、Kubernetes のクラスター管理を試すことができます。
- SLA(サービス品質保証)はないため、商用用途での運用は推奨されません。
- クラスター管理に関する機能は制限がありますが、小規模な開発やテスト用途には十分です。
Standard レベル
- SLA(アップタイム保証)があり、より高い信頼性とパフォーマンスが提供されます。
- 主に商用・本番環境向けで、エンタープライズ用途のクラスター管理が必要な場合に選ばれます。
- クラスター管理には従量課金制が適用され、使用したリソース(VM など)に基づいて追加料金が発生します。
Premium レベル
- Standard レベルに加えて、Kubernetes バージョンの 2 年間の延長サポートなど、より長期的な運用が必要な場合に選ばれます。
- 商用環境向けの非常に高い信頼性と追加サポートが提供されます。
- Standard と同じく、従量課金制で、クラスター管理料金がかかります。
リソース使用料金(仮想マシン、ストレージ、ネットワークなど)
Kubernetes クラスターは仮想マシン(VM)やストレージ、ネットワークのリソースを使ってコンテナを実行します。 そのため、クラスターを運用するために使う仮想マシン、ストレージ、IP アドレス、ネットワークなどのリソースに対して従量課金されます。
例えば、仮想マシンの数やサイズ、ストレージの量に応じて、使った分だけお金がかかるという仕組みです。
※本記事に記載されている情報は、2025 年 1 月時点の情報です。変動する可能性があるため、最新の情報については、公式ページで確認してください。
コスト最適化とスケール戦略
不要なコストがかからないようにするために、以下の2つのポイントを押さえてコストを最適化しましょう。
スポットノードプールの活用
スポットノードプールとは、Azure のスポットインスタンスを利用したノードプールです。スポットインスタンスは、Azure が余った計算リソース(通常は低需要のリソース)を一時的に提供するものです。 スポットノードプールを使えば、低コストで一部のワークロードを実行できます。ピーク時でないときには安価なリソースを利用することでコストを抑えることが可能です。
なおこのリソースは安価ですが、 Azure のリソース需要が増加した場合、スポットインスタンスが強制終了される可能性があります。そのため、業務の重要度によって適切に活用しましょう。
開発・検証用クラスターと本番用クラスターの分離
開発・検証用のクラスターと本番用クラスターを分けることで、無駄なリソース利用を減らし、コストを効率的に管理することができます。
Azure Kubernetes Service (AKS)運用・管理のベストプラクティス
ここでは、AKS を効率的に運用するためのベストプラクティスをご紹介します。セキュリティ強化、そして問題解決のためにぜひ実践してみてください。
RBAC(ロールベースアクセス制御)やポリシーの設定
AKS を安全に運用するためには、RBAC(ロールベースアクセス制御)を活用することが重要です。ユーザーごとにアクセスできるリソースを細かく制御でき、不必要な権限付与を防ぐことができます。
さらに、Azure Policyを利用してポリシー(ルール)を定義することで、リソースの使用方法やデプロイメントのルールを管理し、セキュリティを強化することも可能です。
Key Vault を利用したシークレット管理
機密情報の管理には、Azure Key Vaultを活用することをおすすめします。API キーやパスワードなどのシークレット情報を安全に保管できるため、コンテナやコードへの直接埋め込みによるリスクを回避できます。
法規制や業界標準に準拠した対策
AKS を運用する際は、ISO、SOC、HIPAA などの業界標準や法規制を遵守することが重要です。こうした規制に基づくガイドラインを定期的に見直し、アップデートすることで、コンプライアンスを維持しましょう。
Azure Monitor と Azure Log Analytics による監視
Azure Monitor と Azure Log Analytics は、AKS クラスターの監視とログ管理を行うためのツールです。
こうしたツールを利用することで、コンテナやポッドのパフォーマンス、稼働状況、エラーをリアルタイムで追跡し、問題が発生した場合には迅速に対応することができます。
【関連記事】 Azure Monitor とは?機能概要や料金体系、活用事例について解説
Azure Kubernetes Service (AKS)のユースケース
AKS は、さまざまな場面で活用することができます。ここでは、AKS の具体的な活用場面をご紹介します。
マイクロサービスのデプロイと管理
AKS は、大規模なアプリケーションを小さなサービス(マイクロサービス)に分けて運用するのに役立ちます。
たとえば、オンラインショッピングサイトでは、以下のように複数の異なる機能を持つシステムを運用する必要があります。
- 認証サービス: ユーザーのログイン・登録を処理。
- 商品カタログサービス: 商品情報を提供。
- 注文処理サービス: 注文の管理と決済。
- 通知サービス: 注文完了や配送状況をユーザーに通知。
各サービスをコンテナとしてデプロイし、Kubernetes の機能で自動的に管理することができます。こうすることで、サービス間の通信やスケーリングが簡単になり、インフラ管理の負担も減少するでしょう。
DevOps および CI/CD パイプラインの構築
アプリケーションの開発からテスト、デプロイまでを自動化したい場合、AKS は非常に有効です。
AKS のコンテナ環境を利用し、Azure DevOps や GitHub Actions などの CI/CD ツールと連携することで、コードが更新されるたびに自動でテストが実行され、アプリケーションのビルドやデプロイをスムーズに行うことができます。この自動化により、インフラの管理負担が大幅に軽減されます。
データ分析および機械学習
機械学習やデータ分析を行いたい場合にも AKS は役立ちます。
AKS 上でコンテナ化された機械学習のモデルを簡単にデプロイし、スケーリングや管理を自動化することができます。また、Azure Machine Learningと連携することで、モデルのトレーニングから評価、デプロイまでのプロセスを自動化でき、機械学習運用の効率が大幅に向上します。
Web アプリケーションのホスティング
コンテナ化された Web アプリケーションをクラウドでホストする際にも、AKS は最適です。
AKS はアプリケーションのトラフィックが増えた際に自動的にリソースをスケーリングし、アプリケーションを高可用性の状態で維持します。
さらに、Azure のロードバランサーやアプリケーションゲートウェイを組み合わせることで、セキュリティや可用性を確保しつつ、高いパフォーマンスを維持しながら Web アプリケーションを運用することができるでしょう。
まとめ
本記事では、AKS の基本概念から特徴、機能、導入手順、他サービスとの比較、料金体系まで幅広く解説しました。
Azure Kubernetes Service(AKS)は、Microsoft Azure 上で提供されるマネージド Kubernetes サービスです。AKS を活用することで、Kubernetes の複雑なセットアップや運用作業を Azure に任せることができ、効率的にシステムを運用できます。また、セキュリティ面や管理のしやすさも向上します。
ぜひ AKS を導入して、クラウドネイティブなアプローチで、スケーラブルかつ信頼性の高いシステム構築に挑戦してみてください。クラウド環境で柔軟かつ信頼性の高いシステムを作ることができ、コンテナの管理も効率よく行えることでしょう。
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本記事が皆様のお役に立てたら幸いです。




