OpenAI o1 とは?
OpenAI o1 は、2024 年に発表された最新の大規模言語モデルであり、複雑な問題に対してより深く思考できる推論重視型の「o シリーズ」の第一弾として登場しました。
GPT-4o までのモデルが自然言語生成に強みを持つ一方で、o1 は 段階的な思考によって問題を解決する能力(推論力) を大幅に強化しており、これまでの限界を打ち破る新たなアプローチが実装されています。
なお、「推論重視型」のほか「Reasoning model」や「推論特化型」などと呼び方はさまざまですが、いずれも段階的に思考し、深い分析を通じて問題を解決する能力に焦点を当てたモデルの特徴を指しています。
OpenAI o1 の特徴
以下に、優れた推論モデルである o1 の特徴をご紹介します。
高度な推論能力
o1 の最大の特徴は、チェーン・オブ・ソート(Chain-of-Thought)と呼ばれる段階的な思考プロセスをモデル内部で自律的に実行する点にあります。 これは、人間が紙に書き出して考えるように、問題に対して複数のステップを踏んで解答を導き出すものであり、複雑な問いに対しても論理的かつ正確な回答が可能となっています。
さらに、o1 は回答の過程で 自己検証(self-checking) を行う仕組みも取り入れており、事実誤認や矛盾の少ない出力が期待できます。
マルチモーダル機能
o1 は、GPT-4o などと同様に、テキストだけでなく画像を入力として理解・解析するマルチモーダル機能も備えています。
例えば、画像の内容を説明させたり、図表を含むドキュメントを読み込ませて分析させたりすることが可能です。これにより、テキスト情報だけでは扱えなかった、より幅広いタスクに対応できます。
長文対応
o1 は、非常に長いテキスト情報を一度に処理できる能力を持っています。
- o1 のコンテキストウィンドウ: 入力/出力:最大 200,000 / 100,000 トークン
この性能により、長大なレポート、複数文書の横断的分析、大規模データの要約や比較といった、高度な業務用途にも対応可能です。
卓越した専門分野性能
o1 は、特に論理的思考や専門知識を要する分野において、従来モデルを大きく上回る性能を発揮しています。
- 数学能力: 国際数学オリンピックレベルの難問において、先行モデル (GPT-4o: 正解率 13%) を大幅に上回る正解率 83% (o1-preview 時点) を記録しました。
- コーディング能力: 競技プログラミングプラットフォーム Codeforces において、参加者の上位 11%に相当するスコアを達成しました。
このように、o1 モデルは単なるテキスト生成 AI ではなく、複雑な問題を解決するための強力な「思考エンジン」としての側面を持っています。
o1-mini も利用が可能
o1-mini (オーワン・ミニ) は、高性能な o1 モデルの軽量・高速版として位置づけられるモデルです。 o1 は、性能が高いものの応答速度が遅く、利用コストが高い課題があります。一方で、o1-mini はモデルの高い推論能力を一定量維持しつつ、応答速度の速さと利用コストの低さを実現しています。
o1-mini の特徴は以下の通りです。
【o1-mini の特徴】
- テキスト処理特化。o1 のような画像入力には非対応
- コンテキスト長は入力 128,000 トークン、出力 65,536 トークン
日常的な業務の自動化、軽量なチャットボット、コード生成支援など、速度とコスト効率が求められる場面での活用が期待されます。
Azure OpenAI(AOAI)Service とは?
Azure OpenAI Service(AOAI)は、OpenAI が開発した大規模言語モデル(GPT-4o、o1 など)を、Microsoft Azure のクラウド上で安全かつスケーラブルに利用できる API サービスです。
このサービスを通じて、画像や長文を含む複雑な情報処理を、クラウド上で柔軟に実行することが可能になります。
ポイントは、Azure OpenAI Service は「o1」だけに限定されたものではなく、GPT シリーズを含む複数の OpenAI モデルを統合的に提供する“サービス全体”の名称であることです。
開発者にとっては、Azure OpenAI Service が o1 モデルを含む各種 AI モデルの機能を呼び出すための共通インターフェースとなり、企業システムやアプリケーションへの導入を円滑にします。
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Azure OpenAI Service (AOAI) 上で o1 モデルを利用するメリット
高性能な o1 モデルを Azure OpenAI Service 経由で利用することには、特に企業にとって多くのメリットがあります。
セキュリティとコンプライアンス
Azure の堅牢なセキュリティ機能(ネットワーク分離、アクセス制御、暗号化など)を利用できます。顧客の入力データはモデルの学習には一切使用されず、データの機密性が保護されます。
Azure は多くの国際的なコンプライアンス基準(ISO 27001、 SOC 2 等)にも対応しています。
信頼性とスケーラビリティ
Microsoft Azure の安定したインフラ上で稼働し、ビジネスの要求に応じて処理能力を柔軟に調整できます。
他の Azure サービスとの連携
Azure AI Vision、Azure AI Search、Azure Functions など、豊富な Azure サービスとシームレスに連携し、より強力な AI ソリューションを構築できます。
統合された管理と監視
Azure Portal や Azure AI Foundry を通じて、モデルのデプロイから利用状況の監視、コスト管理までを一元的に行えます。
これらのメリットにより、企業は o1 のような最先端の AI モデルを、自社のポリシーに沿って安全かつ効率的に活用できます。
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OpenAI の推論モデル「o シリーズ」とは?
「o シリーズ」とは、複雑な問題に対して自律的に思考し、段階的に推論を行うために設計された、OpenAI の最新モデル群です。 Azure OpenAI Service では、従来の GPT シリーズに加えて、この「o シリーズ」も利用可能です。
o シリーズの特徴
o シリーズに含まれるモデルには、o1、o1-mini、o3-mini などがあり、いずれも高度な推論能力を備えているのが特徴です。 従来のモデルでは難しかった、複数の要素を統合して結論を出す場面や、数理・論理的な推論が必要なタスクにおいて、より人間的な思考に近いアプローチが可能となっています。
各モデルの特徴は以下の通りです。
- o1: o シリーズの最初のモデル。複雑な推論、画像理解(Vision)、長文処理、高度なコーディングや数学問題に対応。o1-mini が軽量版として存在する。
- o3: o1 の次世代モデル。 STEM 分野(科学、数学、コーディング)や構造化出力に強い。 o3-mini が軽量版として存在する。
- o4-mini: 軽量・高速・低コストの最新モデル。o4 は 2025 年 4 月現在、公開されていないものの o4-mini は Azure 上でも既に利用が可能。
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GPT モデルシリーズとの違い
従来の GPT シリーズ(GPT-4o、GPT-4 など)も非常に高性能ですが、主に人間のような自然なテキスト生成や対話能力に重点が置かれています。
一方、o シリーズは 問題解決プロセスそのもの に焦点を当てており、特に多段階の思考や論理的な整合性が求められるタスクでその真価を発揮します。 ただし、その分、応答に時間がかかったり、コストが高くなったりする傾向があります。
どちらが良いというわけではなく、解決したい課題の種類に応じて、GPT シリーズと o シリーズを使い分けることが重要です。
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最新フラッグシップモデル「GPT-5」との使い分け
最新のGPT-5も高度な推論能力を備えていますが、o1とはその焦点が異なります。
o1は、自己検証(self-checking)などを伴う丁寧な思考の連鎖(Chain of Thought)によって、いかに論理的に正しいプロセスをたどるかを最重視した「推論特化モデル」です。
一方、GPT-5は、高速な応答から深い思考までを自動で切り替えることで、あらゆる課題に対して最適な最終結果を出すことを目指した「万能モデル」と言えます。
そのため、思考の過程そのものの質や正確性を極限まで追求するならo1、幅広いタスクでバランスの取れた高精度な答えを求めるならGPT-5、という使い分けになります。
Azure OpenAI での o1 モデルの使い方
ここでは、Azure OpenAI Service で o1 モデルを API 経由で利用可能にするための手順を説明します。
今回は Azure AI Foundry を使用して、o1 モデルをデプロイします。
- Azure にログインし、Azure ポータル上の新しい Azure OpenAI Service リソースの作成 から、リソースを新規作成します。

Azure OpenAI リソースの作成
- リソースの作成が完了したら、Azure AI Foundryにアクセスし、 Azure OpenAI の機能を選択します。

Azure OpenAI Service にアクセス
- 作成したリソースを選択します。 選択が完了すると、Azure AI Foundry の操作画面が表示されるので、モデルカタログから o1 をクリックします。
Azure AI Foundry の操作画面 - デプロイをクリックすることで、OpenAI o1 モデルが API で利用できる状態になります。
モデルのデプロイ
- サイドバーのホームから、API キーとエンドポイントを確認しましょう。指定された API を呼び出すことで、OpenAI o1 モデルを実際に利用できるようになります。
API キーとエンドポイントの確認
上記のステップですぐに利用の準備が整いました。 次のセクションでは、o1 を API を介して利用する例をご紹介します。
Python での実装例
ここでは、Python での実装例として、o1 モデルを活用し、チャット形式で質問するまでをご紹介します。 プロンプトには、「私は議事録の作成を自動化したいと思っています。ステップバイステップで考えて。結論から述べて」と入力した結果を示します。
【セキュリティに関する注意】 システムを公開する際は、API キーやエンドポイントの情報をコード内に直接書くのは避けましょう。環境変数を利用して安全に管理することが基本です。Azure 上で運用する場合は、Azure Key Vault などのシークレット管理サービスを活用することで、さらにセキュアな運用が可能です。
python によるチャットの実装
上記のスクリプトを実行すると、モデルはプロンプトの内容をもとに回答を生成します。
出力された生成例は以下です。
生成された回答結果
結果を確認すると、o1 モデルが課題を正確に理解し、詳細な解説を生成していることが確認できます。
OpenAI o1 モデルの料金体系とコスト管理
o1 モデルおよび o1-mini モデルの利用料金は、基本的に処理したトークン量に基づく従量課金制です。入力(プロンプト)と出力(生成されたテキスト)の両方で、100 万トークンあたりの単価が設定されています。 これが、現時点での o シリーズモデルの主要な課金方式です。
o1 モデルの料金
以下に示す o1 モデルの料金は、利用するデータゾーンやリージョンによって異なります。2025 年 4 月時点確認、o1 および o1-mini は西日本リージョンでは利用できず、国内だと東日本リージョンのみで利用可能です。
モデルバージョン & データゾーン | 入力料金 | キャッシュ入力 | 出力料金 |
|---|---|---|---|
o1 2024-12-17 Global | ¥2,264.85 | ¥1,132.43 | ¥9,059.40 |
※上記は 2025 年 4 月時点の情報です。料金体系は変更される可能性があります。最新かつ正確な情報は、必ずAzure OpenAI Service の価格ページ でご確認ください。
コスト管理・運用のポイント
o1 モデルは高性能ですが高価なため、API 利用にあたってはコスト管理が重要になります。以下の点に留意しましょう。
トークン使用量の監視
o1 は長文や画像を扱い、内部推論も行うため、トークン使用量が増加しやすいです。Azure Portal や Monitor で利用状況を定期的に確認しましょう。特に画像入力のトークン数に注意が必要です。
応答の冗長性への対処
o1 は応答が長くなる傾向があるため、API 呼び出し時に「max_tokens」パラメータで出力長を適切に制限することを検討します。
適切なモデルの選択
全てのタスクに o1 は必要ありません。コストや速度を重視する場合は、o1-mini、o3-mini、GPT シリーズなど、より安価なモデルも検討しましょう。
Azure OpenAI o1 のユースケース
o1 モデルの高度な推論能力、画像理解(Vision)、長文対応能力は、Azure OpenAI Service のセキュアな環境と API 連携によって、様々な企業の課題解決に応用できます。
ここでは、具体的な活用シーンをいくつかご紹介します。
複雑な業務ドキュメント処理の自動化
企業では、大量の文書や契約書、図表含むような書類の正確なレビューが求められますが、時間とコスト、人的ミスのリスクが課題です。
o1 モデルを利用することで、上記のような業務を効率化・高度化することが可能です。具体的には、以下のような処理を行います。
- 図表を含む長大な報告書などの書類から重要条項を抽出し、リスクを特定、要約を生成
- 複数文書間の矛盾点を指摘、法的論点の整理、データの異常を検知等
- Azure AI Search と組み合わせた RAG システム構築で社内ルールに沿った回答を生成
ソフトウェアの開発支援
複雑化するソフトウェア開発において、大規模コードの理解、高度な実装、バグ修正は大きな負担です。
o1 モデルを開発環境と API 連携させ、開発効率と品質を向上させます。 o1 モデルは以下のように活用されます。
- 複雑な仕様からのコード生成、リファクタリング提案、脆弱性指摘
- プロジェクト全体のコード解析や依存関係の特定
- スクリーンショット付きバグレポートや UI デザイン案の理解をサポート
Azure のスケーラブルな基盤上で、Azure DevOps や GitHub など開発エコシステムと連携することも可能です。
高度な分析・異常検知システム (製造・インフラ監視など)
製造ラインやインフラ設備では、センサーデータだけでは捉えきれない異常予兆の早期発見が重要です。
監視システムと o1 モデルを連携させ、予知保全の精度や安全性を高めます。o1 モデルは以下の分析・推論に貢献します。
- 監視カメラ映像からの異常検知(設備の異常振動、異物混入など)と言語化
- センサーデータと画像解析結果を統合した複雑な異常パターンや故障予兆の推論
Azure AI Vision など他サービスとの連携や、Azure Functions 等でのアラート自動化システムも実現できます。
まとめ
本記事では、OpenAI o1 モデルの特徴や他モデルとの違い、実際の活用方法についてご紹介しました。推論に特化した「o シリーズ」 への理解も深まったのではないでしょうか。
「o1」モデルは、Azure OpenAI Service を通じて、Microsoft Azure の堅牢かつスケーラブルな環境のもとで、高度な推論力を安全に活用することができます。セキュリティや透明性にも十分に配慮されており、企業が安心して業務に導入できる体制が整っています。 今後、さまざまな業界や業務領域で o1 モデルの活用が広がり、AI の実用化がさらに加速していくことが期待されます。 ぜひこの機会に、Azure を活用した AI 導入をご検討ください。
東京エレクトロンデバイスは、Azure OpenAI Service をはじめとする Azure の企業導入をサポートしています。お気軽にご相談ください。 お問い合わせはこちら




