TED が提供する Cassia Networks のソリューション
産業用途での無線通信において、安定性と信頼性は何より重要です。ここでは東京エレクトロンデバイスが提供する Cassia Networks の製品ラインナップと、新製品となる M2000 と ATX2000 の機能や特徴について解説します。
Cassia のラインナップと特徴
Cassia は産業用 Bluetooth ゲートウェイのパイオニアで、さまざまな製品を展開しています。BLE 機器は一切変更せずにネットワークに接続でき、13 件の特許(信号処理、ノイズ除去、アンテナ、等)を取得しています。
【主要製品ラインナップ】
- M2000:小型・GPS 搭載モデル(最大 10 台接続)
- S2000:エントリーモデル(最大 20 台接続)LTE 通信対応※
- E1000:標準モデル(最大 40 台接続)LTE 通信対応※
- X2000:Bluetooth 5.0 対応ハイエンドモデル(最大 40 台接続)LTE 通信対応※
※本ソリューションの最新情報は開発会社の情報に準拠します。


新製品 M2000 と ATX2000 の革新性
特に注目すべきは、新たにラインナップに加わった M2000 と ATX2000 です。
M2000 の機能と特徴
2024 年にリリースされた「M2000 4G セルラーモジュール内蔵 Bluetooth ゲートウェイ」は、小型のため移設や短期間の設置にも向いており、移動中の車両などにも設置できます。特筆すべき革新性は、業界最小クラスの筐体サイズでありながら、4G 通信モジュールと GPS 機能を内蔵した点です。これにより、従来は複数の機器で構成していた移動体監視システムを 1 台で実現。設置工事の簡略化と大幅なコスト削減を可能にしました。このほか、以下の特徴を持っています。
- 超小型サイズ:90mm×90mm×30mm のコンパクト設計
- 広温度範囲:-30℃ から 70℃ まで対応
- GPS 機能内蔵:位置情報の取得が可能
- Wi-Fi、または LTE:LTE は 4G モジュール内蔵の為ドングル不要
使用例としては、病院での継続的な生体情報のモニタリング、遠隔医療、産業用 IoT、スマートキャンパス、サプライチェーン管理、ならびに(建物内および車両内での)人員および資産の追跡など、さまざまな業界およびアプリケーションで使用できます。
ATX2000 の機能と特徴
「防爆仕様 Bluetooth ゲートウェイ ATX2000」は耐久性に優れた製品です。その革新性は、防爆規格に準拠しながらも、最新の Bluetooth 5.0 による長距離通信と 700MB の大容量メモリを実現した点にあります。これにより、危険区域でのエッジコンピューティングが可能となり、リアルタイムでのデータ分析や異常検知を実現。化学プラントや石油精製所などでの安全性向上と運用効率化に大きく貢献します。
化学プラントや危険物取扱施設向けに開発されたため、ゾーン 2、22 および Division2 に対応しています。また X2000 と同等の通信性能と処理能力を備えながら、防爆環境でも安全な運用が可能です。このほか、以下の特徴を持っています。
- 堅牢性:IP66、NEMA 4 規格準拠
- 耐環境性:-40℃ から 60℃ まで動作可能
- Bluetooth Low Energy 4.0/4.1/4.2/5.0 対応
- BLE 通信:最長 1km(BLE5.0)、400m(BLE4.X)
- Ethernet、 Wi-Fi
このように、Cassia の Bluetooth ゲートウェイは、さまざまな産業現場のニーズに対応することができますが、その性能を最大限に引き出しているのが、Bluetooth 5.0 に搭載された LE Coded テクノロジーです。この技術が、なぜ長距離通信を実現しているのか、仕組みを解説します。
通信の革新を起こす Bluetooth 5.0 の特長
従来の Bluetooth は、短距離通信という制約が産業利用における大きな課題でした。しかし Bluetooth 5.0 で導入された LE Coded(Long Range)技術は、この制約を解消し、IoT デバイスの新たな可能性を切り開きました。
LE Coded テクノロジーの仕組み
LE Coded は、従来の Bluetooth Low Energy(BLE)の通信方式を根本から見直し、Forward Error Correction(FEC)と Pattern Mapper による革新的な符号化技術を導入しています。
この技術では、S=2(500kbps)と S=8(125kbps)という 2 種類の符号化レートを提供します。S=2 では、1 ビットのデータに対して 2 ビットの符号化を行い、S=8 では 8 ビットの符号化を実施。より多くの冗長ビットを付加することで、通信の信頼性を大幅に向上させています。
例えば、工場環境での実装では以下のような選択で最適化できます。
- 比較的近距離(~ 300m):S=2 モードで高速通信を実現
- 長距離(300m 以上):S=8 モードで信頼性を確保
工場の規模や用途に応じて最適な通信モードを選択できるため、自動車製造ラインであれば S=8 モードによって広大な工場内の端から端まで、安定した通信が実現します。
通信距離 4 倍を実現するメカニズム
LE Coded の革新的な点は、単なる出力増強ではなく、信号処理技術の根本的な改善にあります。3 つの観点から解説します。
- 信号処理の強化
- FEC(前方誤り訂正)により、受信データの誤りを検出・修正
- Pattern Mapper による信号パターンの最適化
- 受信機での S/N 比が最大 12dB に改善
- Link Budget の改善
- 従来比で 12dB 向上
- 理論上の通信距離は約 4 倍に
- 実環境では建物構造や障害物の影響を考慮
- 実用性の向上
- パケットの再送回数が大幅に減少
- システム全体の応答性が向上
- バッテリー寿命の延長に貢献
こうした技術革新により、建屋内でも安定した通信が可能となりセンサーネットワークの信頼性が向上しました。
省電力性能と通信距離の最適化
LE Coded は、通信距離の延長と省電力性能を両立させる上で、いくつかの重要な最適化技術を採用しています。
- 適応型電力制御
- 通信距離に応じた送信出力の自動調整
- 必要最小限の電力で安定通信を実現
- デバイスのバッテリー寿命を最大化
- インテリジェントな通信制御
- 通信品質に応じたコーディングレートの動的選択
- パケットの再送制御の最適化
- 電波環境に応じた通信パラメータの自動調整
- 実用的な省電力設計
- スリープモードの効率的な活用
- 間欠通信による電力消費の最適化
- センサーデータの効率的な集約
このように、Bluetooth 5.0 の LE Coded 技術は、単なる通信距離の延長だけでなく、実用的な省電力性能と信頼性を両立させることで、産業用 IoT の実用化に大きく貢献しています。また、こうした機能を最大限に活用するために、組み合わせる機器も重要となってきます。
長距離通信の実証実験:1.2km の通信に成功
Bluetooth 5.0 の LE Coded 機能がどれほど革新的なのかを調べ、さらに Cassia の独自技術の組み合わせによる可能性を検証するために、東京エレクトロンデバイスは 2023 年 6 月千葉県白子海岸で Bluetooth 長距離通信の実証実験を行いました。

検証環境と実験校正
実験環境の選定では、以下の条件を満たすことから白子海岸を選択しました。
- 見通し距離が 1km 以上確保できる開放空間
- 電波干渉源が最小限で、地形による影響を排除できる平坦な地形
実験にあたっての設備や構成は、以下となります。
- ゲートウェイ:Cassia X2000
- センサーデバイス:レンジャーシステムズ社 iBS05H(Bluetooth5.0/Long Range 対応)
- 測定機材:PC、スマートフォン

実験手法と測定プロセス
実験は、以下の手順で実施しました。
- 基本測定の手順
- 100m 間隔での定点測定
- 各地点で 60 秒間のスキャンテスト実施
- 3 回の測定を実施し平均値を採用
- 測定パラメータ
- パケット受信率(PRR:Packet Reception Rate)
- 受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)
- 比較測定
- Bluetooth 4.0 と Bluetooth5.0(LongRange)での通信試験
- 異なる高さ(2m/5m)での設置テスト

データで見る通信性能の実力
実験結果は、最大通信距離をはじめ品質面で高い性能を確認できる結果となりました。
- 最大通信距離は 4 倍の通信距離を達成
- Bluetooth 5.0 モード:1200m 地点でのデータ受信に成功
- 従来の Bluetooth 4.0 モード:約 300m 地点で通信が途絶
- 信号品質は高い安定性を確認
- 1000m 地点までのパケット受信率:70%弱を維持
- RSSI 値:-80dBm の高感度受信を実現
※実験環境は 25℃±5℃ の範囲で安定動作、湿度は相対湿度 70%以下で性能劣化なし、風速の影響は 5m/s 以下での測定で安定していました。
今回の実験結果から、既存の産業用無線規格と比較しても優れた性能であることがわかります。例えば、一般的な産業用無線 LAN の通信距離が数百メートル程度であることを考えると、1.2km という距離は画期的な成果と言えます。
さらにこの実証実験によって、Bluetooth 5.0 と Cassia の技術の組み合わせが、産業用 IoT の新たな可能性を切り開くことを明確に示しています。特に、広大な工場や倉庫、港湾施設などでの活用において、システム構築の自由度を大きく向上させる可能性を秘めています。
Cassia が安定通信を実現できる理由
Cassia の長距離 Bluetooth 通信における優位性は、3 つの独自特許技術により支えられています。
アンテナ設計における革新的アプローチ
従来の Bluetooth アンテナ設計では、小型化と性能のトレードオフが課題でした。Cassia は独自のアンテナ設計技術により、コンパクトな筐体サイズを維持しながら、優れた受信性能を実現しています。例えば、X2000 では指向性と無指向性のバランスを最適化し、設置場所の自由度を確保しています。
高感度受信を実現する独自技術
Cassia のゲートウェイは-105dBm という高い受信感度を実現。これは一般的な Bluetooth 機器と比較して大きく向上しており、微弱な信号でも安定した通信を可能にします。この技術により、センサー側の送信出力を抑えることができ、バッテリー寿命の延長にも貢献しています。
ノイズ対策の特許技術
産業環境特有の電気的ノイズに対し、Cassia は独自のフィルタリング技術を採用。電力設備や生産機器が稼働する環境下でも、安定した通信品質を維持できます。この技術は 13 件の特許で保護されており、Cassia の競争優位性を支える重要な要素となっています。
これらの技術革新により、理論値では難しいとされていた長距離通信を Cassia は実環境で可能にしました。
Cassia を活用した導入事例やユースケース
実際の導入事例やユースケースから、Cassia が解決する具体的な課題と、その効果について紹介します。
医療施設の導入事例
大規模総合病院での Cassia 導入事例です。同病院では医療機器の所在管理と、患者のバイタルデータのリアルタイム把握という課題を抱えていました。各フロアに Cassia E1000 を設置し、医療機器に BLE タグを装着。さらに Philips 社製のバイオセンサー BX100 との連携により、患者の心拍数や呼吸数などのバイタルデータを継続的にモニタリングできる体制を構築しました。その結果、医療機器の稼働率が向上し、看護師の巡回業務も効率化。特に夜間の患者モニタリングでは、異常の早期発見につながり、医療安全の向上に貢献しています。
化学プラント施設の導入事例
大手化学メーカーの製造プラントでの導入事例をご紹介します。同社では危険物を扱うエリアでの計測データ収集と作業員の安全確保が大きな課題でした。防爆規格に対応した Cassia ATX2000 を採用し、温度・圧力・ガスセンサーとの連携、さらに作業員が装着する BLE タグによる位置把握システムを構築。これにより、危険区域での計測作業を自動化し、異常値の即時検知と作業員の立入管理を実現しました。導入後、定期点検の工数は削減され、24 時間 365 日のリアルタイムモニタリングによって予期せぬ設備トラブルも大幅に減少。プラントの安全性と運用効率の両立貢献することが可能です。
製造業(自動車部品メーカー)のユースケース
大手自動車部品メーカーの製造ラインでのユースケースです。同社は広大な工場内に点在する生産設備の稼働状況把握と予知保全、そして作業者の安全確保という複数の課題に直面していました。そこで Cassia X2000 を 6 台導入し、振動センサー 40 台と作業者用 BLE タグ 80 台を連携させたシステムを構築。これにより、設備の異常を早期に検知してダウンタイムを削減したほか、作業者の位置情報をリアルタイムで把握することで安全性が向上しました。また従来の有線システムと比較して導入コストを大幅に削減でき、投資対効果の高いソリューションとして評価されています。
物流倉庫のユースケース
大手物流企業の大規模物流センターでのユースケースです。同社では、温度管理が必要な保管品の品質維持と、フォークリフトや作業員の動線最適化という課題を抱えていました。そこで ATX2000 を 4 台設置し、環境センサー 20 台とフォークリフト 15 台分の BLE タグを連携させたソリューションを導入。その結果、温湿度の自動記録と異常検知を実現し、フォークリフトの稼働状況や作業員の動線分析により作業効率が向上。さらに、エリアごとの利用状況に応じた空調制御により、電力使用量の最適化にも成功しました。管理業務の効率化と作業品質の向上を両立した事例として注目されています。
こうした導入事例やユースケースが示すように、Cassia のソリューションはさまざまな産業分野で効率化と生産性向上の価値提供をしています。特に注目したいのは、従来型のシステムと比較して導入が容易でコストパフォーマンスが高い点です。
産業 IoT の革新を支える Cassia の Bluetooth 長距離通信ソリューション
Bluetooth 技術の革新と、Cassia の独自技術の組み合わせにより、産業用 IoT の新たな可能性が広がっています。製造現場の効率化や安全性向上、さらには予知保全まで、さまざまな課題解決に貢献できるソリューションとして、今後さらなる活用が期待されます。導入のご検討やお見積りについては、東京エレクトロンデバイス製品サポート窓口までお気軽にお問い合わせください。




