東京エレクトロンデバイス株式会社

Microsoft Azureコラム

2025/12/17

Writer: 手戸 蒼唯(てど あおい)

XDR とは?機能や EDR・NDR・SIEM との違い、必要な背景やメリットなどを解説

製造業のデジタル化が加速する中、サイバーセキュリティの攻撃は日々深刻化しています。特に生産設備や制御システムを標的としたサイバー攻撃は、事業継続に致命的な影響を及ぼす可能性があります。このような状況下で注目を集めているのが、XDR (Extended Detection and Response/エクステンデッド・ディテクション・アンド・レスポンス)です。本記事では、包括的なセキュリティ対策を実現する XDR について、その特徴や導入メリット、効果的な活用方法までを詳しく解説していきます。

XDR とは?特徴や仕組み

XDR は、複数のセキュリティ製品やツールを統合し、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、E メールなど、さまざまな防御領域のセキュリティデータを一元的に可視化・分析・対応する次世代型セキュリティソリューションです。従来の個別対策では見逃されていた脅威も、複数の情報を相関分析することで検知が可能になります。また、AI を活用した自動対応機能により、セキュリティチームの負担を軽減しながら、より高度な防御を実現します。

XDR の概要を説明した図

ダイアグラム自動的に生成された説明

XDR の定義と特徴

XDR の最大の特徴は、従来のポイントソリューションを超えた統合的なアプローチにあります。エンドポイントやネットワークといった個別の防御領域を超えて、組織全体のセキュリティ状況を包括的に把握・制御することができます。

従来型セキュリティ EDR・NDR・SIEM と XDR の違い

XDR は、従来のセキュリティツールの限界を克服する統合ソリューションとして位置づけられます。EDR (Endpoint Detection and Response)はエンドポイントに特化し、マルウェア対策やふるまい検知に優れていますが、ネットワーク全体の脅威は把握できません。NDR(Network Detection and Response)はネットワークトラフィックの異常を検知できますが、エンドポイントの詳細な状況は分かりません。SIEM(Security Information and Event Management)はログを一元管理できますが、相関分析や自動対応には限界があります。一方、XDR はこれらの機能を統合し、AI による高度な分析と自動対応を行います。さらに運用負荷を軽減しながら、包括的な防御を可能にします。

機能

対象範囲

分析能力

自動対応

リアルタイム性

運用負荷

XDR

エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど複数領域を統合

AI 活用による高度な相関分析

高度な自動検知・対応

リアルタイム検知・対応

統合管理により低負荷

EDR

エンドポイントのみ

エンドポイントの振る舞い分析

限定的な自動対応

リアルタイム検知

中程度

NDR

ネットワークトラフィックのみ

トラフィック異常検知

アラート中心

リアルタイム監視

中程度

SIEM

各種ログの統合管理

ルールベースのログ分析

手動対応が中心

準リアルタイム

運用負荷が高い

従来型セキュリティと XDR を比較した図

グラフ, バブル チャートAI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

XDR が求められる背景

デジタルトランスフォーメーションの進展により、企業の IT 環境は急速に複雑化しています。クラウドサービスの活用、IoT デバイスの増加、リモートワークの普及により、従来の境界型セキュリティでは防ぎきれない脅威が増加しています。特に製造業では、IT(情報系システム)と OT(制御系システム)の融合が進み、攻撃対象となる範囲が格段に広がっているため、包括的なセキュリティ対策が不可欠となっています。

サイバー攻撃が巧妙化している

特に現代のサイバー攻撃は、フィッシングメールからの初期侵入、マルウェア感染、データ窃取まで、複数の手法を組み合わせた「マルチベクトル型」が主流です。IBM のレポート※1 によると、データ侵害の世界的な平均コストは前年比 10%増の 488 万米ドルに達し、過去最高を記録しています。特にパブリッククラウドでの侵害コストは 517 万ドルと高額となっている状況下で、従来の単独セキュリティ製品では、もはや十分な対応が難しくなっています。

※1 出典:Cost of a Data Breach Report 2024

IoT セキュリティに関して詳しくは「IoT セキュリティの基本と実践 ~サイバー攻撃から企業を守る 7 つのポイント~」もご覧ください。

XDR の技術とセキュリティ機能

XDR は、複数のセキュリティ機能を統合することで、サイバー攻撃への包括的な対応を行います。エンドポイントからクラウドまで、さまざまな防御領域のデータを収集・分析し、脅威の早期発見から対応、調査までをシームレスに実行します。さらに AI による高度な分析と自動化により、セキュリティチームの負担を軽減しながら、効果的に脅威から防御できます。以下に具体的な機能を解説します。

情報収集

XDR は、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メール、アプリケーションなど、多様なデータソースから情報を収集します。収集したデータは標準化され、一元的に管理されることで、複数の情報源からの相関分析が可能になります。特に製造業では、従来は別々に管理されていた IT システムと OT システムのセキュリティ情報を統合して監視できる点は重要な項目です。

事象検出

AI と機械学習を活用した高度な分析エンジンにより、従来のルールベース検知では見逃されていた不審な挙動や潜在的な脅威を検出します。複数のデータソースからの情報を相関分析することで、単一のセキュリティ製品では検知できない複雑な攻撃パターンも特定可能です。

自動対応

検知された脅威に対して、事前に定義されたプレイブックに基づき、自動的に対応アクションを実行します。例えば、不審なプロセスの停止、感染端末の隔離、マルウェアの駆除などを自動で行い、被害の拡大を防ぎます。特に、製造現場での対応では、生産への影響を最小限に抑えながら適切な対策を講じる必要があり、XDR はきめ細かな自動対応ポリシーの設定を可能にします。

内部不正検出

正規のアクセス権限を持つユーザーによる不正行為も検知対象とします。通常の業務パターンから逸脱した行動、機密情報への不審なアクセス、大量のデータダウンロードなど、内部不正の兆候を早期に発見します。

深堀調査

インシデント発生時には、攻撃の全容解明に必要な詳細情報を提供します。攻撃の侵入経路、影響範囲、実行された不正な操作など、インシデントの全体像を可視化し、効率的な調査を支援します。また、収集された情報は長期保存され、過去に遡った調査や、同様の攻撃への対策立案にも活用できます。脅威ハンティング機能により、能動的な脅威の探索も可能です。

XDR を利用するメリット

従来の個別のセキュリティ対策と比較して、XDR は組織全体のセキュリティ体制を効率的に強化できます。特に、複雑化する IT 環境と OT 環境を持つ製造業において、そのメリットは顕著です。以下に詳しく解説します。

一元管理できて運用負荷を削減できる

複数のセキュリティツールの統合により、管理画面の一元化が実現します。例えば製造業では、セキュリティ運用にかかる工数の削減が可能です。アラートの統合管理により誤検知も減少し、セキュリティチームは本当に重要な脅威への対応に注力できるようになります。

AI で新種のサイバー攻撃にも迅速に対応できる

AI を活用した高度な分析により、既知の脅威だけでなく、新種のマルウェアや未知の攻撃パターンも検知できます。これはヒューリスティック分析や振る舞い分析によるもので、すべての未知の脅威に対して万能ではありませんが、導入することで脅威の初期検知から対応完了までの時間が大幅に短縮できます。特に製造業では、生産停止につながるような重大インシデントの予防と早期対応が可能になります。

包括的な可視化でセキュリティ強化できる

エンドポイントからクラウドまで、組織全体のセキュリティ状況を包括的に可視化します。特に製造現場では、IT 環境と OT 環境の両方を統合的に監視できる点が重要です。セキュリティの死角をなくし、攻撃の早期発見と対策の最適化が可能になります。

このように XDR は、セキュリティ運用の効率化、対応の迅速化、可視性の向上など、多面的な価値を提供します。

XDR のユースケースと導入事例

製造業における XDR の主な活用シーンは以下の通りです。

  1. ランサムウェア対策:初期段階での検知と自動隔離
  2. サプライチェーン攻撃対策:取引先との接続点の監視強化
  3. 内部不正対策:通常と異なる操作の検知
  4. インシデント対応:攻撃経路の特定と被害範囲の把握
  5. コンプライアンス対応:セキュリティ監査への対応

このように XDR は、製造業が直面する様々なセキュリティ課題に対して、包括的な可視化と自動対応を提供することで、効率的にセキュリティ運用が行えます。特に昨今増加しているランサムウェアやサプライチェーン攻撃に対して、早期検知と迅速な対応が可能です。

XDR の導入事例

金融 IT サービスを提供するシンプレクス株式会社では、Microsoft Defender XDR を活用したセキュリティ体制を構築しています。金融機関のガイドラインに準拠する必要があった同社は、コロナ禍をきっかけに従来の境界型セキュリティからゼロトラストセキュリティへと移行。Microsoft 365 E5 を中核に据え、エンドポイント、クラウド、ネットワークといった複数のレイヤーを統合的に監視・対応する XDR を実現しました。

さらに 2024 年には生成 AI「Copilot for Security」を導入し、インシデント対応の工数削減やセキュリティ人材の育成にも効果を上げています。SOC 担当者は「副操縦士が隣に座っているかのよう」とその利便性を評価しています。

Microsoft 365 に関して詳しくは「組織の働き方を変革させ、ビジネスを成長させる Microsoft 365」をご覧ください。

XDR 導入を検討する時には、クラウド側のセキュリティ対策も検討しよう

マルチクラウド環境が一般化する中、XDR によるセキュリティ運用の統合・効率化の検討では、クラウドネイティブなセキュリティ対策として、Microsoft Defender for Cloud のような CWPP/CSPM 機能を備えたソリューションが一緒に検討されることが少なくありません。東京エレクトロンデバイスは、Microsoft Defender for Cloud をはじめとする、Microsoft クラウドサービスを取り扱っています。

Microsoft Defender for Cloud は、クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)として、以下のような価値を提供します。

  1. DevOps セキュリティの統合管理
  • 複数のパイプラインにまたがる DevOps 環境全体の可視化と一元管理
  • Infrastructure as Code のセキュリティ確保による、設定ミスの最小化
  • コードからクラウドまでのコンテキストに応じた統合的なセキュリティ管理
  1. クラウドセキュリティ態勢の強化
  • エージェントレスとエージェントベースのスキャンによる環境全体の包括的な可視化
  • 攻撃パス分析に基づく、インテリジェントな優先順位付け
  • データを意識したセキュリティ態勢管理による機密情報の保護
  1. クラウドワークロードの保護
  • マイクロソフトの脅威インテリジェンスを活用した高度な検知・防御
  • Azure、AWS、GCP などマルチクラウド環境での統合的な保護
  • オンプレミス環境を含めたハイブリッド環境全体の一元的な管理

Microsoft Defender for Cloud の導入により、セキュリティ運用コストの削減、インシデント対応時間の短縮、誤検知の削減による運用効率の向上などの成果が得られます。

さらに組織全体のセキュリティガバナンスの観点からも、以下のような改善が実現されました。

  • コンプライアンス対応の自動化による工数削減
  • セキュリティ態勢の可視化による経営層への報告効率化
  • DevOps チームとセキュリティチームの連携強化

このように、現代のセキュリティ対策において重要なのは、単なる脅威検知・対応だけでなく、開発から運用まで含めた包括的なセキュリティ管理の実現です。特にクラウドネイティブな環境では、従来型のセキュリティツールでは対応が難しい課題が増えており、CNAPP のような統合的なアプローチが不可欠となっています。

Microsoft Defender for Cloud は、こうした課題に対して最新のセキュリティ機能を提供し続けており、組織のデジタルトランスフォーメーションを安全に推進するための重要なプラットフォームとなっています。導入に関する詳細な情報や、お客様の環境に最適な構成についてのご相談は、マイクロソフトまたは認定パートナーである東京エレクトロンデバイスにお問い合わせください。

CNAPP に関して詳しくは「CNAPP とは?クラウドサービスを利用するなら 知っておきたいセキュリティ対策を解説」もご覧ください。

XDR を最大限に活用するためのポイント

XDR を導入するにあたって、事前に注意したいポイントを解説します。

セキュリティポリシーを明確化する

XDR の導入前に、組織のセキュリティポリシーを明確にすることが重要です。特に製造現場では、生産性とセキュリティのバランスを考慮したポリシー設定が必要です。検知すべき脅威の優先順位づけや、インシデント発生時の対応手順なども事前に定義しておきましょう。

セキュリティツールとの連携を強化する

既存のセキュリティ製品との効果的な連携が、XDR の性能を最大限に引き出すカギとなります。API を活用した連携や、データフォーマットの標準化など、技術的な統合を適切に行うことで、より効果的な防御が可能になります。

セキュリティに詳しい人材の確保する

XDR は高度な機能を持つツールですが、それを使いこなすには専門知識を持った人材が必要です。自社で採用するのが難しい場合は、専門知識に長けた企業と協力するのが良いでしょう。

XDR を導入する際のチェックリストの図

XDR で製造業のセキュリティ対策を高める

XDR は、製造業のセキュリティ課題を解決する強力なソリューションです。複雑化する IT/OT 環境において、統合的な可視化と自動化された対応を実現し、セキュリティ運用の効率化と防御力の強化を同時に達成します。導入にあたっては、組織のセキュリティポリシーの整備、既存ツールとの連携、人材の確保など、いくつかの重要なポイントがありますが、適切に準備を行うことで、その効果を最大限に引き出すことができます。東京エレクトロンデバイスでは、XDR と組み合わせて包括的なセキュリティ管理を実現する Microsoft Defender for Cloud を提供しています。お客様の実環境に最適なセキュリティソリューションの選定から導入、運用まで、専門家が丁寧にサポートいたします。詳細はこちらをご覧ください。

XDR に関する FAQ

Q: 既存のセキュリティ製品は置き換える必要がありますか?

A: 必ずしも全ての製品を置き換える必要はありません。既存製品との連携を検討することをお勧めします。

Q: OT 環境での導入に特別な注意点はありますか?

A: 生産設備への影響を考慮し、事前の検証と段階的な展開が重要です。

Q: リモートワーク環境でも効果を発揮しますか?

A: はい、エンドポイントの場所に関係なく、統合的な監視が可能です。

Q: 社内でのセキュリティ体制はどう変わりますか?

A: 運用の効率化により、戦略的なセキュリティ施策に注力できるようになります。

Q: コンプライアンス対応は容易になりますか?

A: 統合的な可視化と報告機能により、監査対応が効率化されます。

Q: バージョンアップや保守は必要ですか?

A: 定期的なアップデートにより、最新の脅威に対応する必要があります。

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