東京エレクトロンデバイス株式会社

Microsoft Azureコラム

2026/08/31

Writer: 手戸 蒼唯(てど あおい)

MAIシリーズとは?Microsoft自社開発AIモデル群の特徴から利用経路、Frontier Tuningまで解説

MAIシリーズは、Microsoft AIチームが自社で設計・学習しているファーストパーティのAIモデル群です。推論、コーディング、画像生成・編集、音声生成、音声認識、コードセキュリティといった領域をカバーし、Microsoft Foundry、Azure Speech、GitHub Copilot、Microsoft SecurityのMDASHなど、モデルごとに異なる経路から利用できます。Microsoft Build 2026を起点に発表が続いており、7月以降もMAI-Voice-2-Flash、MAI-Image-2.5-Pro、MAI-Image-2.6、MAI-Code-1.1-Flash、コードセキュリティ向けのMAI-Cyber-1-Flashなど、モデルの追加や更新が並んでいます。


本記事では、MAIシリーズの主要モデルと利用経路、Build 2026で同時に発表されたFrontier Tuning(コンプライアンス境界内で強化学習を適用するMAIモデル向けチューニング基盤)の狙い、業務への組み込み方までを解説します。


東京エレクトロンデバイスは、Microsoft Foundry上のモデル選定やPoC設計、Azure環境でのAIエージェント基盤の構築をサポートしています。

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MicrosoftのAIモデル群「MAIシリーズ」とは?

MAIシリーズとは、Microsoft AIチームが自社で設計・学習しているファーストパーティのAIモデル群です。推論、コーディング、画像生成・編集、音声生成、音声認識、コードセキュリティといった領域をカバーし、Microsoft Foundry、Azure Speech、GitHub Copilot、Microsoft SecurityのMDASHなど、モデルごとに異なる経路から利用できます。

Microsoft Build 2026を起点に発表が続いており、7月以降もMAI-Voice-2-Flash、MAI-Image-2.5-Pro、MAI-Image-2.6、MAI-Code-1.1-Flash、コードセキュリティ向けのMAI-Cyber-1-Flashなど、モデルの追加や更新が並んでいます。


MicrosoftのAIサービスでは、MAIシリーズのほかにも複数ベンダーのモデルを利用できます。そのなかでMAIシリーズは、他社モデルを一律に置き換えるものではなく、コスト効率・データ主権・カスタマイズ性を重視するエンタープライズ用途で、要件に応じて使い分ける選択肢として位置づけられます。


MAIシリーズのモデル一覧

Microsoft Build 2026では、MAIシリーズに推論・画像・音声・コーディングの新モデルが加わり、その後も用途別モデルの追加や世代更新が続いています。


現在の主要モデルを、モダリティと提供状態でまとめると以下のようになります。

モデル名

モダリティ

主な用途

提供状態

MAI-Thinking-1

テキスト推論

複雑なマルチステップ推論、長コンテキスト処理

Microsoft FoundryでPublic Preview

MAI-Code-1.1-Flash

テキスト(コード特化)

GitHub Copilotでの補完・エージェント型タスク

GitHub CopilotでGA

MAI-Code-1-Flash

テキスト(コード特化・旧世代)

GitHub Copilotでの補完

GitHub CopilotでGA

MAI-Voice-2/MAI-Voice-2-Flash

音声生成

音声エージェント、ナレーション、多言語TTS

Azure SpeechでPublic Preview

MAI-Transcribe-1.5

音声認識

多言語トランスクリプション、議事録、字幕

Azure SpeechでPublic Preview

MAI-Transcribe-1

音声認識(旧世代)

従来の多言語トランスクリプション

2026年8月20日にDeprecated扱いへ

MAI-Image-2.5/MAI-Image-2.5-Pro/MAI-Image-2.5-Flash

画像生成

広告クリエイティブ、プレゼン素材、UIモック

Microsoft FoundryでPreview

MAI-Image-2.6

画像生成(次世代)

次世代の生成・編集

Arena/MAI Playgroundで提供中、Microsoft Foundryへ順次提供予定

MAI-Cyber-1-Flash

テキスト(コードセキュリティ特化)

コードの脆弱性発見・検証・修復

MDASH経由の限定提供

この表からわかるとおり、MAIシリーズはモデルごとに提供基盤が分かれている点が特徴です。推論系と画像系はMicrosoft Foundryのモデルカタログから利用し、音声系はSpeechリソース経由でVoice系がAzure Speech API/SDK、Transcribe-1.5がLLM Speech APIから呼び出す構成です。


コード特化のMAI-Code系はGitHub Copilot、コードセキュリティ特化のMAI-Cyber-1-FlashはMDASH経由と、それぞれ別の入口を持ちます。


推論モデル(MAI-Thinking-1)

MAI-Thinking-1は、Microsoft AI初の自社推論モデルです。複雑なマルチステップ命令の処理、長コンテキストでの推論、コード生成を主な対象としており、Microsoft FoundryでPublic Previewとして提供されています。


Microsoftが公開している主要仕様は次の通りです。

  • アーキテクチャ:Mixture-of-Experts(MoE)構成、約35Bの活性パラメータ
  • コンテキストウィンドウ:256Kトークン
  • ベンチマーク:Build 2026発表時点の独立評価でAnthropic Claude Sonnet 4.6を上回り、SWE-Bench ProではClaude Opus 4.6と同等のコード生成能力を示した


長コンテキストでの推論を低トークンコストで扱える点が特徴です。Chat Completions API互換性も備えており、社内文書の横断分析や関数呼び出しを含むエージェント用途に組み込みやすい設計です。

MAI-Thinking-1.png

MAI-Thinking-1と主要モデルのベンチマーク比較 引用:Microsoft


コーディングモデル(MAI-Code-1.1-Flash)

MAI-Code-1.1-Flashは、2026年8月11日に発表されたコーディング特化モデルの最新世代で、GitHub CopilotでGAとして提供されています。Microsoftによれば、初代のMAI-Code-1-Flash比でトークン効率が約25%向上し、単価は約4分の1に抑えられており、日常的な補完・リファクタリング・テスト実行を伴うエージェント型タスクに向く設計です。


Build 2026で発表された初代のMAI-Code-1-Flashは、5Bパラメータの軽量モデルながらSWE-Bench Proで51%のスコアを示したモデルとして紹介されました。この51%はMAI-Code-1-Flashの評価値であり、1.1-Flashの評価値ではありません。GitHubの現行モデル一覧では1.0と1.1がともにGA扱いです。複雑な設計判断や大規模アーキテクチャ検討では、MAI-Thinking-1などの高性能モデルとの使い分けが有効です。


また、数学・科学・指示追従などの評価でも、Claude Haiku 4.5との比較結果が公開されています。

MAI-Code-1-Flash.png

MAI-Code-1-FlashとClaude Haiku 4.5のベンチマーク比較 引用:Microsoft


音声系モデル(MAI-Voice-2/MAI-Voice-2-Flash/MAI-Transcribe-1.5)

MAIシリーズの音声系モデルは、テキスト読み上げのMAI-Voice-2/MAI-Voice-2-Flashと、音声認識のMAI-Transcribe-1.5の3本立てで、いずれもAzure Speech経由で利用します。

MAI-Voice-2は、テキストから自然な音声を生成するTTSモデルで、15言語のマルチリンガル音声生成と、韻律・感情・抑揚を含めた発話表現に対応しています。低レイテンシ応答向けのMAI-Voice-2-Flashは、2026年7月23日からPublic Previewとして提供されています。英語以外の言語でも自然な音声品質が求められる音声アシスタントやカスタマーサポート、長尺ナレーションといったシーンに向くモデルです。

MAI-Voice-2.png

MAI-Voice-2の品質評価(MAI-Voice-1との比較) 引用:Microsoft


MAI-Transcribe-1.5は、音声をテキストに変換するSpeech-to-Textモデルです。Microsoftによれば43言語に対応しており、旧世代のMAI-Transcribe-1が対応していた25言語から範囲を拡大しました。専門用語向けのキーワードバイアスや文字起こしスタイル指定にも対応し、ネイティブストリーミングAPIは今後提供予定です。呼び出しはLLM Speech APIで、リクエストのenhancedMode.modelプロパティにMAIモデル名を指定して利用します。会議、インタビュー、コールセンター分析などの自動文字起こし基盤として、精度・処理性能・対応言語を重視する企業に向く選択肢です。

MAI-Transcribe-1.5.png

MAI-Transcribe-1.5のWord-Error-Rate(多言語比較) 引用:Microsoft


旧世代のMAI-Transcribe-1は2026年8月20日にDeprecated扱いへ移行するため、旧モデル利用中の環境ではMAI-Transcribe-1.5への移行計画を先行して立てておくとよいでしょう。


画像系モデル(MAI-Image-2.5系/MAI-Image-2.6)

MAIシリーズの画像系モデルは、標準版のMAI-Image-2.5、高品質版のMAI-Image-2.5-Pro、軽量・高速版のMAI-Image-2.5-Flash、次世代のMAI-Image-2.6の4本立てで、テキスト・画像プロンプトから高品質な画像を生成・編集するモデルです。MAI-Image-2.5系はMicrosoft FoundryでPreviewとして提供され、PowerPointやOneDriveの画像編集シナリオにも組み込まれています。


2026年8月10日に発表されたMAI-Image-2.6は、ArenaのText-to-Imageランキングで2位を獲得しました。現在はArenaとMAI Playgroundで利用でき、Microsoft Foundryにも順次提供される予定です。

MAI-Image-2.6.png

Text-to-Image Arena Top 10 引用:Microsoft


APIから直接呼び出す用途ではMicrosoft Foundry Modelsが基本となる一方、Microsoft 365ワークフローに組み込む場合はPowerPointやOneDrive側からの利用が中心となります。用途に応じて呼び出し経路を選ぶ形です。


セキュリティ系モデル(MAI-Cyber-1-Flash)

MAI-Cyber-1-Flashは、2026年7月27日に発表された、MAI-Thinking-1の系統から派生したコンパクトなコードセキュリティモデルです。Microsoftのマルチエージェント型脆弱性検出・修復基盤「MDASH」に組み込まれ、複雑なコードベースに潜む脆弱性の発見、検証、修復を担います。

MDASHでは、最大90%のタスクをMAI-Cyber-1-Flashで効率的に処理し、特に難しい約10%をGPT-5.4に割り当てます。Microsoftによると、この構成はCyberGymで約96%を記録し、従来のMDASHの最上位構成と比べてコストを50%削減しました。


大量のコードを継続的に検査し、脆弱性の特定から修復までを自動化したい企業に向くモデルです。

MAI-Cyber-1-Flash.png

MDASHの脆弱性検出・修復パイプライン(Prepare→Scan→Validate→Dedupe→Prove) 引用:Microsoft


MAIシリーズの利用経路

MAIシリーズはモダリティによって接続基盤が分かれるため、大きくMicrosoft Foundry、Azure Speech、GitHub Copilot、MDASHの4経路に整理して考えると設計しやすくなります。

Microsoft Foundryで利用するモデル(MAI-Thinking-1/MAI-Image-2.5系)

MAI-Thinking-1とMAI-Image-2.5系は、Microsoft FoundryポータルまたはAzure PortalでFoundryプロジェクトを作成し、モデルカタログからモデル名を検索してデプロイ、エンドポイントとAPIキーで呼び出す構成です。

Preview段階のモデルでは、事前の参加登録やアクセス申請が伴う場合もあります。詳細な手順はFoundry Modelsを介したMAI-Image-2.5系の利用手順をご覧ください。


Azure Speechで利用する音声モデル(MAI-Voice-2/MAI-Voice-2-Flash/MAI-Transcribe-1.5)

音声系モデルは、Azure PortalからSpeechリソースを作成し、そのリソースのエンドポイントとキーを使ってMAIモデルを呼び出します。モデルごとに個別のデプロイ名は作成せず、Voice系はSSMLのVoice ID、Transcribe系はリクエストのenhancedMode.modelプロパティでMAIモデルを指定する点が、Foundry Modelsのデプロイ方式との大きな違いです。

音声系の公式手順は、MAI-Voicesの利用手順とMAI-Transcribeの利用手順をご覧ください。


GitHub Copilotで利用するCodeモデル(MAI-Code-1-Flash/MAI-Code-1.1-Flash)

MAI-Code-1-FlashとMAI-Code-1.1-Flashは、GitHub CopilotおよびVS CodeのモデルピッカーまたはAuto picker経由で利用します。Microsoft Foundryのカタログには含まれません。


新規に採用する場合は、トークン効率と単価が改善されたMAI-Code-1.1-Flashが有力な選択肢です。利用可否はCopilotクライアントのバージョン、契約プラン、組織の管理者ポリシーによって異なるため、事前の対応状況の確認が必要です。


MDASHで利用するCyberモデル(MAI-Cyber-1-Flash)

MAI-Cyber-1-FlashはMDASH経由の限定提供モデルで、通常のMicrosoft Foundryカタログには含まれません。利用にはMicrosoftの公式窓口からの登録が必要です。

料金はモデルによって計量単位が異なり、テキスト入出力、画像入出力、音声時間などが混在します。最新の単価はMicrosoft Foundry Modelsの料金ページ、および各モデルの公式ページやFoundryカタログで確認できます。


Frontier Tuning:MAIモデルを業務に合わせて磨き込む基盤

ここまではMAIシリーズ側のモデル群と利用経路を整理してきました。ここからは、Build 2026でMAIシリーズと同時に発表されたFrontier Tuningの狙いと構成、提供形態を見ていきます。

Frontier Tuningは、企業のコンプライアンス境界内で強化学習を適用し、MAIモデルを業務のやり方に合わせて磨き込むためのチューニング基盤です。Build 2026のMAIキーノートでは、「MAIモデルをカスタマイズし、フルスタックの『ヒルクライミングマシン』を提供する」ものと説明されています。


以下の図は、タスクの定義から学習、本番環境への展開、継続的な改善までの流れを示したものです。

Frontier Tuningの提供形態.png

Frontier Tuning 引用:Microsoft


Frontier Tuningの主な特徴は、以下の3点に整理できます。

  • 業務ワークフロー、ツール利用、評価シグナルを取り込み、管理された強化学習環境で継続的にモデルを改善する
  • 本番システムを切り離した強化学習環境でエージェントが繰り返し試行錯誤する
  • チューニング結果のモデルやスキルは、コンプライアンス境界内に閉じた状態で運用する


Frontier Tuningの構成要素は、Microsoft Developer Blogによると以下の3要素です。

構成要素

内容

強化学習環境(RLE)

エージェントが本番に影響を与えずに試行錯誤できる学習・推論基盤

企業固有の入力データ

自社のコンテンツ、業務プロセス、用語、ワークフロー、慣例といった暗黙知

チューニング済みのモデル・スキル・オーケストレーション

訓練結果として生成される、業務に最適化されたモデル・スキル・実行ハーネス

社外にデータを持ち出さず、コンプライアンス境界内に閉じた状態で運用できる点が特徴で、製薬・ヘルスケア、コンサルティング、教育、人事、税務など、専門知識や独自プロセスを含む業務領域が主な想定用途として挙げられています。


Frontier Tuningによる性能向上

こうした仕組みの効果として、Build 2026では、Excel関連タスクでGPT-5.4と同等水準の性能を保ちながら、出力トークンあたりのコスト効率が最大約10倍になると紹介されました。2026年7月の追加発表では、Excel向けMAIモデルが一般的なタスクでGPT-5.6と同等水準の性能を示したことも公表されています。


提供状況の注意点

提供面では、Build 2026発表時点でFDEチーム経由のPrivate Previewとして一部顧客に提供されていました。現行の製品ページではSelf-serviceにも言及されていますが、Public PreviewやGAは明記されていません。利用窓口には申請フォームが案内されています。


MAIシリーズとFrontier Tuningを業務に組み込む場面

MAIシリーズは単体でも活用できますが、Frontier Tuningと組み合わせることで、汎用モデルに近い性能を保ちつつ業務コンテキストに寄せた振る舞いを引き出せる可能性があります。ここでは、業務領域ごとにMAIシリーズの活用イメージと、Frontier Tuning適用の想定を整理します。


社内ナレッジエージェント・業務ドキュメント自動化

社内文書、社内手順、FAQ、業務ログ、社内規程、提案書、税務・人事・業界固有ドキュメントといった暗黙知や専門知識を扱う文書生成領域は、Frontier TuningでMAIモデルに業務コンテキストを取り込むイメージがつきやすい領域です。社内問い合わせ対応、業務手順の自動化、ナレッジ横断検索、雛形生成やレビュー反映といった用途では、汎用モデルを都度プロンプトで補正する運用と比較した効果をPoCで見ていくアプローチが有効です。

データがコンプライアンス境界内に留まり、既存のアクセス制御が引き継がれる点も、法務や監査部門との調整が必要な領域で採用しやすい要素と言えます。


多言語コンタクトセンター・議事録基盤

MAI-Transcribe-1.5とMAI-Voice-2、MAI-Voice-2-Flashを組み合わせることで、多言語での問い合わせ対応、議事録作成、コールモニタリングを自動化できます。Transcribe側は43言語、Voice側は15言語に対応しているため、グローバル拠点を持つ企業のコンタクトセンター基盤や、多言語会議の議事録自動化基盤として選びやすい構成です。


プロダクト内画像生成体験

MAI-Image-2.5系は、Microsoft FoundryまたはMicrosoft 365製品を通じて、提案資料、社内マニュアル、マーケティングクリエイティブの作成を支援するモデルです。PowerPointとOneDriveへの組み込みが進んでおり、既存のMicrosoft 365利用フローに沿った運用が可能です。

後継のMAI-Image-2.6はArenaおよびMAI Playgroundで提供中、Microsoft Foundryへは順次提供予定のため、本番導入にはFoundryカタログでの提供開始を待つ必要があります。


コーディングエージェントの低コスト運用

MAI-Code-1.1-FlashをGitHub Copilot経由で活用することで、日常的な補完、リファクタリング、テスト実行といった軽量タスクを低コストで処理できます。複雑な設計判断や大規模なアーキテクチャ検討にはMAI-Thinking-1などの高性能モデルを、日常タスクにはMAI-Code-1.1-Flashをルーティングする使い分けが基本方針となります。


本番運用へ組み込む際に押さえたい設計論点

本番ワークフローへ組み込む際は、モデル選定と料金設計、Frontier Tuningの相談導線、データガバナンスをまとめて設計しておくと運用が安定します。


モデル選定と料金の見立て

導入検討時は、各MAIモデルの提供状態と最新の対応リージョンを、Foundryカタログ、Azure Speech、GitHub Copilot、MDASHのそれぞれで確認する必要があります。Preview段階ではAPI仕様やモデル挙動が変わる余地があるため、本番導入前にPoCで動作確認と評価を行うとよいでしょう。旧モデル利用中の環境では、MAI-Transcribe-1のDeprecated移行に合わせて、1.5への切り替え計画を早めに立てる必要があります。


最新単価は、Foundry Modelsの料金ページと各モデル公式ページ、Foundryカタログで確認できます。想定利用量をトークン、画像枚数、音声時間で用途ごとに見積もり、Copilot、Speech、Foundry、MDASHの経路別に総コストを試算しておくと、超過リスクを見通しやすくなります。Frontier Tuningの学習・評価・保存にかかる関連費用は公開されていないため、個別見積での確認が必要です。


Frontier Tuning窓口への相談とデータガバナンス

Frontier Tuningは公開フェーズが公式ページで明確に示されていないため、利用を検討する場合はMicrosoftの公式窓口(aka.ms/frontiertuning)への事前相談が必要となります。相談時に確認しておきたい主な論点は、現行の提供フェーズと対象顧客条件、FDE経由のみかCopilot StudioやFoundry Self-serviceでの利用可能性、自社ユースケース(音声・画像・コーディングといったモダリティを含む)が対応モデルに含まれるか、実装や運用フェーズでのMicrosoft側リソース関与範囲、といった項目です。

データガバナンス面では、Frontier Tuningでデータがコンプライアンス境界内に留まり、既存のアクセス制御が適用されます。実装フェーズに入る前に、学習に投入するデータの選定基準、データ保持期間、アクセス権限、監査ログの設計、モデル利用範囲、削除要求への対応フローを、法務や情報セキュリティ部門と連携して定義しておくとよいでしょう。


他社モデルとの併用方針

Microsoft Foundryでは、MAIシリーズだけでなく、OpenAI製のGPT-5.5系やGPT-5.6系、Anthropic Claude系、DeepSeek、Meta、Mistral、Cohereなどの他社モデルも選択でき、用途別に併用できる設計です。導入前に、用途別に採用するモデルの一覧、ルーティング条件、モデル更新時の評価フローを整理しておくと、後続のモデル追加や切り替えのオーバーヘッドを抑えられます。


まとめ

本記事では、MicrosoftのAIモデル群「MAIシリーズ」と、Build 2026で同時に発表されたエンタープライズ向けチューニング基盤Frontier Tuningの狙い、利用経路、業務への組み込み方までをご紹介しました。

MAIシリーズは、モダリティごとに提供基盤が分かれている点が特徴です。推論と画像系はMicrosoft Foundry、音声系はAzure Speech、コード特化はGitHub Copilot、コードセキュリティ特化はMDASHという4つの入口があり、業務要件によって利用経路が異なります。Frontier Tuningは、汎用モデルの直接利用と比べて業務コンテキストに寄せたモデルを、コンプライアンス境界内で継続的に磨き込むための基盤として、MAIシリーズとセットで検討する位置づけです。

企業導入では、既存のMicrosoft投資と業務要件を起点に、影響範囲の小さい経路から段階的に本番運用へ広げる進め方が現実的です。プレビュー段階のモデルも多いため、公開状況を最新情報で確認しつつ、中長期的な視点で技術選定を進めていくのが有効です。


東京エレクトロンデバイスでは、Microsoft Foundry上のモデル選定やPoC設計、Azure環境でのAIエージェント基盤の構築を総合的にサポートしています。MAIシリーズを使った業務エージェントの検討や、Frontier Tuningの活用可能性に関するご相談も承っております。

ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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