Build 2026が示したGitHub Copilotの進化方向
Build 2026では、GitHub Copilotの進化として、Copilot app、MAI-Code-1-Flash、Agent Skills、Copilot SDK GA、Copilot CLI強化、Copilot code review強化(Azure Repos対応含む)、MCPの対応拡大が並行して発表されました。
GitHub Copilotは2022年のコード補完機能としての登場から数年で、Agentモード、Coding Agent、Spaces、コードレビュー、CLI、SDK、Extensionsと機能を拡張してきており、Build 2026はその流れの延長線上で、これまで個別に強化されてきた機能群をひとつの開発ループとして束ねる方向の発表が中心となっています。
Build 2026で示された4つの主要テーマ
Build 2026のGitHub Copilot関連発表を整理すると、以下の4つに分かれます。
テーマ | 主な発表 |
|---|---|
エージェント駆動の作業環境 | GitHub Copilot app、Cloud / Local sandboxes |
Copilot専用のコーディングモデル | MAI-Code-1-Flash |
エージェント機能の標準化 | Agent Skills、MCPの対応拡大 |
ターミナル開発の拡張 | Copilot CLI強化、Microsoft Build-CLI |
これらは独立した発表ではなく、要件整理→実装→レビュー→CI/CDという開発ループ全体を支える要素として相互に連携する形で発表されました。
要件整理→実装→レビュー→CI/CDのAI協調開発体験
Build 2026のCopilot関連発表を貫く中心テーマは、開発ループ全体をAIと協調する開発体験です。
4フェーズで関与するCopilotのツール・モデル
ソフトウェア開発の各フェーズで、Copilotのツール・モデルがどう関与するかを整理すると、以下のようになります。
フェーズ | 主な役割 | 関連するツール・モデル |
|---|---|---|
要件整理 | Issueから設計案を起こす、論点を整理する | GitHub Copilot app、Copilot Chat、Coding Agent |
実装 | コード補完、リポジトリ横断の変更、テスト生成 | Copilot CLI、VS Code、Visual Studio、MAI-Code-1-Flash |
レビュー | プルリクエストの自動レビュー、複数観点でのチェック | Copilot code review、Agent Skills |
CI/CD | CIの監視、失敗の修正、マージまでの自動化 | GitHub Copilot app(Agent Merge)、Cloud sandboxes |
この表からわかるとおり、Copilotは単一の補完機能から、開発ループの4つのフェーズすべてに関与するエージェント群へと役割を広げました。
特に、Issueを起点としてプルリクエスト作成、レビュー、CI修正、マージまでをひとつのループとして捉える点が、Build 2026の方向性として明確になっています。
Issue-to-mergeのループ
Build 2026のセッションでは、Issueからマージまでの一連の流れが繰り返し示されました。Issueにぶら下げた要件をエージェントが受け取り、リポジトリを調査し、設計案を提示します。続けてコード変更を行い、レビューを受け、CIをパスさせて最終的にマージに至る流れです。該当セッションには、LIVE162「From issue to merge in one loop」、BRK203「From CLI to PR」、BRK200「Why your AI code doesn't ship」などがあります。
ひとりの開発者が複数のエージェントに任せながら進めるイメージが、こうしたセッションを通じて具体化された点が、Build 2026のメッセージの中核といえます。
開発者は、自分のPC、ブラウザ、ターミナル、モバイル端末といった複数のデバイスから同じCopilotセッションに接続し、進捗を確認できます。
この体験を支えているのが、後述するGitHub Copilot app、Copilot CLI、Cloud sandboxesといった新しいツール群です。1つのエージェントを単独で動かす世界から、複数エージェントを並列で動かしながら開発ループ全体を回す世界への移行が、Build 2026を機に本格化したと考えられます。
GitHub Copilot app:issue-to-mergeの新デスクトップ体験
GitHub Copilot appは、Build 2026で提供対象が拡大したテクニカルプレビューの中でも、開発ループ全体を束ねる役割を担う発表です。
Copilot appは、エージェント駆動の開発に特化したデスクトップアプリとして設計されています。これまでブラウザ、IDE、ターミナルに分散していた進行中の作業を、1つの画面に集約することを狙いとしています。

GitHub Copilot appの画面例 引用:GitHub Blog
Copilot appを構成する4つの機能
Build 2026版のCopilot appは、代表的には次の4点を軸に構成されています。
- 「My Work」ビュー:接続済みリポジトリにまたがる、進行中のエージェントセッション、Issue、プルリクエスト、バックグラウンドの自動処理を1か所で確認できる単一のダッシュボード
- 隔離されたGit worktreeでの並列実行:各エージェントセッションが独立したGit worktree上で動作するため、複数エージェントが同じリポジトリで並列に変更を加えても干渉しない
- 「Agent Merge」:エージェントがプルリクエスト作成後もCIを監視し、失敗チェックの修正やマージまで自動で進める仕組み
- 「Canvases」:エージェントの計画、PR、ブラウザ、ターミナル等を同じ作業面で追跡・編集できる機能(参考:Expanded technical preview availability for the GitHub Copilot app)
提供形態は、Copilot Pro / Pro+ / Business / Enterpriseプラン契約者向けのテクニカルプレビュー版で、Windows / macOS / Linuxに対応しています。詳細はGitHub Copilot appの公式ドキュメントとExpanded technical preview availability for the GitHub Copilot app | GitHub Changelogで公開されています。
開発ループの観点では、Copilot appは要件整理から実装、CI監視、マージまでをデスクトップ画面に集約する役割を担います。Issueを起点とした並列セッションの管理と、Agent MergeによるCI監視・マージ自動化を組み合わせることで、開発者は複数のエージェントを俯瞰しながら開発ループ全体を進められるようになります。
MAI-Code-1-Flash:Copilot最適化のコーディングモデル
Build 2026で発表されたMAI-Code-1-Flashは、Copilot向けに最適化されたコーディングモデルです。
MAI-Code-1-Flashは、Microsoft AIが自社開発したCopilot最適化のコーディングモデルで、Microsoftによるpurpose-built coding modelsの新しい波の第一弾として発表されました。Build 2026でリリース・プレビューされたMAIシリーズ7モデルの一員にも位置づけられています。

MAI-Code-1-Flashベンチマーク 引用:Microsoft AI
Copilotハーネスで訓練された軽量モデル
MAI-Code-1-Flash最大の特徴は、本モデルがGitHub Copilotの本番ハーネスを直接使って訓練されている点です。コード補完だけでなく、テストの実行、ファイル編集、ターミナル操作、エージェントのツール呼び出しといったCopilot周辺のシステムとの相互作用を、訓練段階から織り込んでいます。これによって、汎用コーディングモデルでは出にくい「Copilotの中で動くときの自然な動作」が引き出せる設計になっています。
5 billion active parametersの軽量なエージェント型コーディングモデルで、Copilotのコード補完やエージェントタスクを低レイテンシ・低トークン消費で扱える設計です。
提供は2026年6月2日からCopilotで開始されており、Copilot Free / Student / Pro / Pro+ / Max向けに、限定ユーザーから段階的に展開されています。VS Codeのモデルピッカーから「MAI-Code-1-Flash」を選択することで、Copilot Chatやエージェントモードの推論モデルとして利用できます。MAIシリーズには推論特化の「MAI-Thinking-1」、画像生成の「MAI-Image-2.5」、音声書き起こしの「MAI-Transcribe-1.5」なども含まれます。
これにより、CopilotユーザーはOpenAI、Anthropic、Google、MicrosoftのモデルをVS Codeのモデルピッカーから用途に応じて選び分けられる構成になっています。
開発ループでは、MAI-Code-1-Flashは実装フェーズの推論モデルとして機能します。コード補完、生成、テスト実行、ツール呼び出しといった軽量で高頻度なタスクを低レイテンシ・低トークン消費で処理する役割を担い、OpenAI系・Anthropic系のモデルと用途に応じて使い分ける構成です。
Agent Skills:エージェント機能の標準化
Agent Skillsは、Build 2026でCopilot code reviewやMCPに組み込まれ、レビュー・CI/CDの組織標準化と接続する要素として位置づけられています。
Agent Skillsは、Copilotエージェントに固有の作業手順を「スキル」として登録するための仕組みで、2025年12月にCopilotで対応が開始されました。Build 2026では既存のAgent SkillsがCopilot code reviewやMCPと組み合わせて使えるようになり、組織横展開で活用される範囲が広がっています。

Agent SkillsのSKILL.mdイメージ 引用:GitHub Changelog
Build 2026での標準化ポイント
Agent Skillsの基盤となる標準化ポイントは、「SKILL.md」(スキルの目的・トリガー・参照ファイル・手順を記述する規格化されたMarkdownファイル)がMarkdownベースのポータブルな指示形式として、複数のAIエージェント形式と互換性を持つ点です。Build 2026の変化として強調されたのは、この既存のAgent SkillsがCopilot code reviewやMCPと組み合わせた運用範囲が広がったことで、GitHub Copilot(VS Code拡張)、Copilot CLI、Copilot cloud agentに加えてレビューやエージェント連携でも同じ「SKILL.md」を参照できるようになりました。
現時点では、こうした標準化はまずリポジトリ/プロジェクト単位のProject Skillsとして共有するのが前提です。GitHub Docsでは組織・エンタープライズ単位のSkillsはcoming soonとされており、将来的により広い単位で横展開できる構成へ拡張される見込みです。
製造業の文脈では、検査・解析スクリプトの実装、設計レビュー、デプロイ手順といった工程ごとの標準化に応用できると考えられます。SKILL.mdの具体的な書き方や個別ユースケースは、GitHub Docs|About agent skillsで公開されています。
開発ループ全体で見ると、Agent Skillsは実装・レビュー・CI/CDの各フェーズに、プロジェクト固有の作業手順を持ち込む役割を担います。レビュー観点、テスト方針、デプロイ手順をSKILL.mdとしてリポジトリ内で共有することで、別々のエージェントが動作しても同じ品質基準を参照しやすくなります。組織横断の標準化は、今後のorganization-level/enterprise-level skillsの展開とあわせて検討する位置づけです。
Copilot CLI / Microsoft Build CLI:ターミナルからのAI開発
Build 2026では、Copilot CLIと、その上で動く拡張スキルMicrosoft Build CLI、公開プレビューとなったCloud / Local sandboxesがまとめて強化されました。
- Copilot CLI: Improved UI, rubber duck, prompt scheduling, and voice input | GitHub Changelog
- Introducing Copilot CLI and agentic capabilities enhancements in JetBrains IDEs | GitHub Changelog
Build 2026でのCopilot CLI強化
Build 2026ではCopilot CLIに対して、ラバーダック(壁打ち相談機能)と音声入力が一般提供で追加され、プロンプトスケジューリングと改良UIは実験機能として提供されました。
あわせてGoogle Geminiモデル対応や、「Shift+Tab」で切り替えるAutopilotモード(一定の操作をエージェントに任せて連続実行させるモード)の試験提供も追加されています。

ターミナル上だけで要件整理から実装まで完結できる構成になりつつあり、IDEを立ち上げる時間も惜しい現場のオペレーションでも、Copilot CLIがAI駆動開発のゲートウェイとして機能します。
Cloud sandboxとLocal sandbox
エージェントが破壊的な操作を行う可能性に備えて、Build 2026では「Cloud and local sandboxes」の公開プレビューが開始されました。ローカルsandboxは「/sandbox enable」で有効化し、macOS、Linux、Windowsで利用できるクロスプラットフォームの分離実行環境として提供されます。Microsoft Execution Containers(MXC)を基盤に、Copilotが実行するシェルコマンドのファイルシステム、ネットワーク、システム権限へのアクセスを制限する仕組みです。
クラウドsandboxは「copilot --cloud」で起動し、GitHubがホストする一時的なLinux環境でエージェントを動作させる仕組みとして提供されます。

Copilot CLIのクラウドsandbox起動 引用:GitHub Changelog
ローカル端末で破壊的な操作が走ることを避けたい場合は、クラウドsandboxでの実行に切り替えることで、業務PCの状態をクリーンに保つことができます。製造業の現場PCや、規制業界の開発機など、ローカル環境を厳密に保護したいケースで有効な選択肢になります。
Microsoft Build-CLI:Buildセッションを探すCopilot CLIスキル
Microsoft Build-CLIは、Microsoft公式GitHub orgの「microsoft/Build-CLI」で公開されている、Copilot CLI向けのスキルです。プロジェクトの依存ファイル(「package.json」、「requirements.txt」、「.csproj」など)を読み込み、Microsoft Buildのセッションカタログから関連セッションを自動で見つけ出します。Build 2026の発表内容との突き合わせを、ローカルプロジェクトの文脈で実行できる構成です。
対応クライアントは、GitHub Copilot CLI、VS Code、Visual Studio 2026、Claude Codeです。Build-CLI自体は本記事の主題ではありませんが、Copilot CLIとMCP(後述)を組み合わせた拡張パターンの一例として、エージェント時代の開発ツールの形を示しています。
開発ループの観点では、Copilot CLIは要件整理から実装・修正までをターミナル上で完結させる入口です。Cloud / Local sandboxesを組み合わせることで、エージェントの破壊的な操作を分離しつつ、CI失敗時のホットフィックスやリポジトリ全体への一括変更も安全に実行できる構成になります。
Copilot code review:AIコードレビューの強化
Build 2026では、Copilot code reviewのレビュー深度と連携範囲も拡張されました。
Copilot code reviewは、プルリクエストのレビューをCopilotに任せる機能です。自動レビューのトリガー、対応プラン、提供サーフェスといった基本構成はCopilot code reviewの公式ドキュメントで公開されており、ここではBuild 2026で追加された強化点を中心にご紹介します。
MediumレビューレベルとAgent Skills / MCP連携
Build 2026に合わせて、Copilot code reviewに公開プレビューの強化機能が追加されました。具体的には、Mediumレビュー努力レベル、Agent SkillsおよびMCPサーバーとの統合、Copilot Memoryとの連携の3点です。
対象は既存のCopilot Pro / Pro+ / Business / Enterpriseユーザー、およびDirect Org Billingを利用する非Copilotユーザーとして案内されています。Business / Enterpriseでは、組織・リポジトリ側の設定に応じて利用範囲を制御します。Mediumレベルは従来より深い論理チェックとセキュリティ観点を扱うレビューレベルです。
加えて、Azure Repos向けCopilot Code Reviewがプレビューとして提供開始され、Azure DevOpsで管理されているリポジトリにもCopilotの自動レビューを適用できるようになりました。
Build 2026で示された方向性は、人によるレビュー前の一次チェックをCopilotに任せ、人間レビュアーは難所と意思決定に集中するという分担を、組織標準として運用可能なレベルに引き上げる点にあります。Agent Skillsと組み合わせることで、チーム/プロジェクト独自のレビュー観点をSKILL.mdで定義し、レビュー時に常に同じ基準でチェックされる構成も組めるようになっています。
開発ループでは、Copilot code reviewはレビューフェーズをCopilotに任せる仕組みです。Mediumレベルによる深い論理チェックと、Agent SkillsやMCP連携による組織固有の観点を組み合わせることで、人間レビュアーが実装ミスの一次チェックから解放され、意思決定が必要な難所に集中できる構成へと移行できます。

Copilot code reviewのMediumレベル指摘例 引用:GitHub Changelog
MCP統合:エージェント外部接続の標準
Build 2026で対応範囲が拡大したModel Context Protocol(MCP)は、エージェントの外部接続標準として重要な位置を占めています。
MCPは、エージェントとアプリケーションが文脈を共有するためのオープン標準です。MCPサーバーの基本構成(リモート/ローカル、対応IDE、認証方式)はExtending Copilot Chat with MCPの公式ドキュメントで公開されており、ここではBuild 2026で広がった使い所を中心にご紹介します。
Build 2026での対応範囲拡大
GitHub Copilotでは、Build 2026以降にMCP対応がさらに拡大し、社内システム、SaaS、ナレッジ検索といった外部リソースをCopilotエージェントから扱えるようになりました。Build 2026のLAB532「From data to context: Agent-ready knowledge with Foundry IQ」では、Foundry IQをMCPサーバーとしてGitHub Copilot CLIに接続する構成が示されています。Microsoft 365側のWork IQ APIsについても、Microsoft公式ブログでREST API、MCP server、A2Aを通じた接続方法が案内されており、Copilotエージェントが社内ナレッジや業務文脈へ接続する方向性を補強しています。
これは、CopilotがGitHubの中で完結するのではなく、社内システム、Microsoft 365、Microsoft Foundry、外部SaaSを横断する開発エージェントへと役割を広げる方向を支える動きといえます。組織でMCPサーバーの利用範囲を制御したい場合は、Copilot Business / Enterprise向けのMCP policy設定を用いることで、許可・拒否リストや承認フローを整備できます。
開発ループ全体で見ると、MCPは全フェーズ横断でエージェントが外部リソースに安全にアクセスする経路を提供します。要件整理ではSharePointの仕様書、実装ではFoundry IQの社内ナレッジ、レビューでは社内コーディング規約、CI/CDではデプロイ管理SaaSへの問い合わせ、といった形で、フェーズごとに異なる外部リソースをエージェントから扱える設計です。
エンタープライズ統治と品質保証
エージェントが要件整理からCI/CDまで深く関与する時代には、統治と品質保証の論点もあわせて設計する必要があります。
統治の論点
Copilot cloud agentは、利用条件として有料Copilotプラン契約を必要とします。Business / Enterpriseでは、管理者による有効化が前提です。
その上で、次のような統治オプションが整備されています。
- リポジトリ所有者によるオプトアウト
- カスタム指示によるエージェントへの知識付与
- MCPサーバーのホワイトリスト管理
- ルールセット・ブランチ保護対応(bypass actor設定)
- セキュリティアラートのエージェント割り当て
- セッションあたり最大59分の実行時間
これらは、エージェントが「組織として許可された範囲」でしか動作しない構成を作るための基本要素です。新規にエージェント機能を導入する場合は、こうした統治オプションを最初から設計に組み込んでおくとよいでしょう。
AI生成コード固有のリスク
Build 2026のエンタープライズ・セキュリティ系セッションでは、AI生成コードに固有のリスクとして次のような論点が繰り返し取り上げられました。
- パッケージマネージャ経由で取り込まれる外部ライブラリの脆弱性混入
- AIが生成したコードのテストカバレッジ不足
- 公開コードと類似する提案の確認、ライセンス・依存関係管理上の懸念(GitHub DocsのCode Referencesで公開コードとの類似性を確認可能)
- レビュー疲れによる人間レビュアーの注意力低下
該当セッションには、TT620「Coding Agents in the Enterprise」、BRK200「Why your AI code doesn't ship」、LTGSP498「Stop vulnerabilities in AI-generated code」などが含まれます。
これらに対しては、GitHub Advanced Securityが提供する脆弱性スキャン、Secret Scanning、Dependency Reviewといった機能群を、Copilotのレビューループと組み合わせて運用するパターンが推奨されています。あわせてBuild 2026では、Microsoft DefenderとGitHub Code Securityの統合が一般提供され、コード上の検出結果を組織横断のリスク管理ビューに接続できるようになりました。
Copilot code reviewの自動レビュー、Agent Skillsによるチーム標準化、MCPによる社内システム連携と組み合わせることで、エージェントが生成したコードに対して、人間のレビューを補完する多段防御を組むことが可能になります。
Copilot Business / Enterpriseとの接続
エンタープライズ運用では、Copilot Business / Enterpriseの利用が前提となります。Business / Enterpriseには、組織横断のポリシー設定、利用状況の監査、データ保護条項といった機能が含まれます。これらをGitHub Advanced Security、Microsoft Entra ID、Microsoft Purviewと組み合わせれば、Copilotを全社展開する際の統制レイヤーを設計できます。
なお、Copilotのcontent exclusionsは機能ごとに扱いが異なり、Copilot cloud agentについてはGitHub Docsでcontent exclusionsを考慮しない制限が明記されています。そのためcloud agentを使う場合は、対象リポジトリ、権限、MCP、sandbox、ブランチ保護などの設定で別途制御する必要があります。
開発ループの観点では、統治と品質保証はすべての工程に横断して適用される制約レイヤーとして機能します。Copilot Business / Enterpriseのポリシー、GitHub Advanced Security、Cloud / Local sandboxesを早めに設計しておくことで、要件整理から実装、レビュー、CI/CDのどの段階でエージェントが動いても、組織として許可した範囲を管理しやすくなります。
開発ループに組み込む際の設計ポイント
ここでは、Build 2026で示されたCopilot関連機能を、要件整理、実装、レビュー、CI/CDの開発ループへどう組み込むかをご紹介します。
開発ループごとの役割
Build 2026後のCopilot関連機能を、開発ループごとに整理すると以下の表になります。
開発ループ | 主に活用するツール・モデル | 確認すること |
|---|---|---|
要件整理 | GitHub Copilot app、Copilot Chat、Coding Agent | IssueやPRを起点に、作業単位と責任範囲を明確にする |
実装 | Copilot CLI、Agentモード、MAI-Code-1-Flash | ローカル・クラウド実行環境とモデル選択をタスクの重さに合わせる |
レビュー | Copilot code review、Agent Skills | 人のレビュー前に確認する観点をSKILL.mdで標準化する |
CI/CD | Agent Merge、Cloud sandboxes、GitHub Actions | CI失敗時の修正範囲、マージ判断、実行環境の分離を設計する |
外部接続 | MCP、Agent apps | 社内システムやSaaSに接続する際の認証・許可範囲を決める |
統制・品質 | Copilot Business / Enterprise、GitHub Advanced Security | ポリシー、監査、脆弱性検出、秘密情報保護を組み合わせる |
この表では、Copilotの各機能を単体で評価するのではなく、開発作業のどこに組み込むかを先に決めています。要件整理であればIssueやPRとの接続、実装であればモデルと実行環境、レビューであればチーム標準との接続というように、利用場面ごとに確認すべき論点が変わります。
小さく検証してから開発ループへ広げる
Copilotの新機能は、いきなり開発工程全体に適用するよりも、既存の開発ルールに接続しやすい範囲から検証するのが有効です。一例として、以下の順序で活用範囲を広げる方法が考えられます。
- 補完・チャット:既存のIDEやリポジトリ運用に影響を与えにくい範囲で、コード補完と質問対応を標準化します。
- Agentモード / Copilot CLI:一部のリポジトリやチームで、ターミナル操作、コード修正、テスト実行までを含む作業移譲を検証します。
- Copilot app / Agent Skills:Issue、Pull Request、レビュー観点、テスト手順をチーム単位で標準化し、複数エージェントを扱う運用に広げます。
- Agent Merge / MCP / 統制機能:CI/CD、社内システム接続、セキュリティ確認までを含め、開発ループ全体でのAI協調運用に接続します。
この順序は、個人の補助から始め、チームの作業移譲、組織標準、開発ループ全体の統合へ広げる進め方です。製造業の現場でも、エンジニアリング部門のオンボーディングや、装置メーカーのソフトウェア開発体制の刷新で、既存の品質基準を保ちながらCopilotを組み込む選択肢になります。
既存のGitHub製品群との接続
GitHub Copilotは単独の機能ではなく、GitHub Actions、GitHub Issues、GitHub Pull Requests、GitHub Advanced Security、GitHub Marketplaceといった既存のGitHub機能と密接に連携しています。Build 2026で提供対象や活用範囲が拡大したCopilot app、Agent Skills、MCPなどの機能も、これらの既存機能をエージェントから扱いやすくする構成として整備されており、既存のGitHub運用を持つ企業は、その延長線上でCopilotを組み込みやすい設計です。
なお、GitHub Copilot自体の基本機能や各プランの違いについては、東京エレクトロンデバイスAzureコラムの「GitHub Copilotとは?AIペアプログラミングで開発効率を高める機能と使い方を解説」をご参照ください。
まとめ
本記事では、Microsoft Build 2026を起点に、GitHub Copilotの進化方向、要件整理からCI/CDまでのAI協調開発体験、GitHub Copilot app、MAI-Code-1-Flash、Agent Skills、Copilot CLI、Copilot code review、MCP、エンタープライズ統治と品質保証、開発ループに組み込む際の設計ポイントまでをご紹介しました。
Build 2026の新機能・新モデルを開発ループに割り当てると、要件整理ではGitHub Copilot appのMy Workビュー、実装ではMAI-Code-1-Flashを含むモデル群とCopilot CLI、レビューではCopilot code reviewとAgent Skills、CI/CDではAgent MergeとCloud sandboxesが中心になります。これらを横断するのが、MCPによる外部接続の標準化と、Copilot Business / Enterprise・GitHub Advanced Securityによる統治・品質保証レイヤーです。
エンジニアリング組織の現場では、エディタ補完から始まり、AgentモードやCopilot CLIによる部分的な作業移譲、Copilot appとAgent Skillsを用いたチーム標準化、開発ループ全体のAI協調運用へと、既存の品質基準に合わせて活用範囲を広げていく進め方が有効でしょう。
東京エレクトロンデバイスでは、GitHub Copilotを活用したAI協調開発体験の設計・導入を総合的にサポートしています。
Copilot Business / Enterpriseの導入計画、Copilot CLIやCopilot appの社内展開、Agent SkillsとMCPを使ったチーム標準化、GitHub Advanced Securityを組み合わせた品質・統制設計まで、エージェント時代のソフトウェア開発に関するご相談をお受けしています。
GitHub Copilotの機能や導入支援について詳しくは、GitHub Copilotソリューションページをご覧ください。
Azure環境やMicrosoft製品を含めた導入相談は、Azure相談窓口からお問い合わせください。





