Foundry IQとは?
Foundry IQは、Microsoftが提供するAIエージェント向けの統合ナレッジ検索基盤です。Azure AI Searchをベースに、複数のデータソースを横断検索し、ユーザー権限を反映したうえで必要な情報を取得できる仕組みを提供します。2026年3月時点ではパブリックプレビューとして提供されています。
従来は、エージェントごとに個別のRAGや検索基盤を実装する必要がありましたが、Foundry IQを使うことで、共通のナレッジベースを通じて社内外の知識へ統一的にアクセスできるようになります。これにより、検索設計や権限制御の重複を減らし、運用しやすいエージェント環境を構築できます。

Foundry IQのイメージ (引用:Microsoft)
IQエコシステムにおけるFoundry IQの位置づけ
Microsoftは、エージェントが企業活動に必要な情報を適切に活用できるよう、役割ごとに整理されたIQという仕組み(Fabric IQ、Work IQ、Foundry IQ)を提供しています。
では、このIQとはどのようなものなのか、そして3つのIQにはどのような違いがあるのか、順を追って見ていきましょう。
AIにおけるデータ整備の必要性
AIは非常に高性能ですが、そのままでは企業の情報を正しく扱えるわけではありません。 たとえば、数値データの意味や指標同士の関係、組織内で誰がどの業務に関わっているのか、文書の重要度や公開範囲といった情報は、単にデータを渡しただけでは十分に理解できないのです。
こうした背景から、企業の情報をAIに活用させるには、AIにデータを渡す前に 「構造化・意味付け・権限制御」 を行う工程が不可欠になります。
IQとは
そこでMicrosoftが提示しているのが「IQ」という考え方です。
IQとは、企業の情報を、AIが実務で安全かつ適切に活用できる状態に整えるための仕組みのことを指します。
Microsoftは、このIQを実現するために、役割の異なる3つの仕組みを用意しています。
- Work IQ
- Fabric IQ
- Foundry IQ
それぞれが異なる種類の情報を扱いながら、AIが企業コンテキストを横断的に活用できる環境を構成しています。では、ひとつずつ見ていきましょう。
Work IQ
Work IQは、企業の日々の業務の流れをAIが把握できるようにする仕組みのことです。基盤となるのは Microsoft 365 です。
企業活動は、数値データだけで成り立っているわけではありません。誰がどのプロジェクトに関わっているのか、どの議題が今議論されているのか、どの部門がどの業務を進めているのか。こうした"動き"の情報は、文書や会議、チャットのやり取りの中に含まれています。
Work IQは、そうした情報を整理し、次のような業務コンテキストをエージェントに提供してくれます。
- 組織がどのように動いているか
- 誰がどの業務に関わっているか
- どの話題が現在進行中か
こうした情報を得ることで、エージェントは単なる情報検索にとどまらず、「今どのチームがこの案件を担当しているのか」といった状況を踏まえた対応が可能になります。

Fabric IQ
Fabric IQは、企業のビジネスデータをAIが活用できる形に整理する仕組みのことです。基盤となるのは Microsoft Fabric です。
たとえば、企業には売上や在庫、顧客情報など、さまざまな数値データがあります。しかし、数値そのものだけではAIは十分に活用できません。「この数字は売上なのか」「どの期間のデータなのか」「他の指標とどう関係しているのか」といった意味づけが必要になってきます。
Fabric IQを用いることで、AIは単に数字を並べるのではなく、「この売上減少は特定の地域と関連している」といった文脈を踏まえた回答ができるようになります。
Foundry IQ
Foundry IQは、企業内外に散在する知識を、AIが安全に検索・活用できるようにする仕組みのことです。
企業の情報は一箇所にまとまっているわけではありません。たとえば、Microsoft Azure上のデータ、Microsoft SharePointに保存された文書、Microsoft OneLakeの情報、さらにはWeb上の公開資料など、形式も保存場所もさまざまです。通常であれば、それぞれ別々に検索する必要があります。
Foundry IQは、こうした異なる種類のデータを横断的に扱い、ひとつの知識基盤としてまとめ上げてくれます。質問を受け取ると、どの情報源を参照すべきかを判断し、必要な内容を抽出してエージェントに渡すのです。
3つのIQの比較
ここまでご紹介した3つのIQの概要を、以下の表にまとめました。
IQ | 提供範囲 | 主な機能 |
|---|---|---|
Work IQ | Microsoft 365 | 組織の運営方法を理解 ・メール、チャット、ファイル ・ミーティング、ワークフロー ・ユーザーの習慣と作業パターン |
Fabric IQ | Microsoft Fabric | データにビジネス的意味を付与 ・オントロジー、セマンティックモデル ・OneLake、Power BIの分析データ ・ビジネスロジックの理解 |
Foundry IQ | Microsoft Foundry | エンタープライズナレッジへの統一アクセス ・Azure、SharePoint、OneLake、Web ・構造化・非構造化データ ・権限対応の知識検索 |
整理すると、
- Work IQ = 組織の動きを理解する
- Fabric IQ = データの意味を理解する
- Foundry IQ = 知識を横断的に検索する
という分担になっていることがお分かりいただけるかと思います。
3つのIQの組み合わせ
これら3つは独立して使うこともできますが、組み合わせることで真価を発揮します。
たとえば、ある顧客対応エージェントが、Foundry IQで製品マニュアルを検索し、Fabric IQで売上データの意味を理解し、Work IQで関連チームの動きを把握するといった形で、組織全体のコンテキストを踏まえた判断が可能になります。
Foundry IQの主な機能
ここからはFoundry IQが提供する主要機能について見ていきましょう。Foundry IQは、エージェントが企業の知識を安全かつ効率的に活用できるよう、いくつかの重要な機能を備えています。
再利用可能なナレッジベース
ナレッジベースは、Foundry IQの中心となる仕組みです。エージェントは個別にデータソースへ接続するのではなく、このナレッジベースに対して質問を送ります。どの情報を参照するか、どのように検索するかといった設定は、ナレッジベース側で一元的に管理されています。
たとえば、「製品サポート」というナレッジベースを作成し、製品マニュアルやFAQ、過去のサポートチケットを登録しておけば、チャットボットやメール対応エージェント、社内向け検索ツールなど、複数のエージェントから接続して利用することができます。
つまり、プロジェクトごとにデータ接続や検索ロジックを組み立て直す必要がなくなり、エージェント開発が大幅にシンプルになるのです。
エージェント検索エンジン
ナレッジベースには、エージェント検索エンジンという AIを活用した高度な検索エンジン が組み込まれています。
普通の検索は「1回検索して終わり」ですが、エージェント検索はそれとは異なり、まず質問を理解し、必要であれば分解し、複数回にわたって検索を行い、最後に結果を統合するという流れで動きます。
結果は引用付きで返されるため、回答の根拠を後から追跡することも可能です。
また、検索の深さは調整できるようになっており、軽量な検索から高度な推論型検索まで柔軟に設定することができます。
エンタープライズレベルのセキュリティ
Foundry IQは、企業で安全に使うことを前提に設計されています。
セキュリティ面での主なポイントとしては、対応するデータソースではユーザーごとの閲覧権限を検索結果に反映できること、許可された文書だけを回答の根拠に使うこと、既存のID・権限管理(Entra ID)と連携できること、対応ソースでは機密ラベルや分類ルール(Purview)も維持されること、そして回答がどの資料に基づくかを後から確認できることが挙げられます。
このように、セキュリティルールを保ったままAI検索ができるというのが、Foundry IQの大きな特徴のひとつです。
対応データソース
Foundry IQが扱えるデータの種類は、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。
- インデックス化されたデータ データをFoundry側に取り込み、検索しやすい形に自動で整理しておく方式です。(例: OneLake、SharePoint、Blob Storage など)あらかじめ最適化された状態で検索できるため、高速かつ安定した検索が可能になります。
- リモート(フェデレーテッド)データ データを取り込まず、必要なときに元のシステムへ問い合わせる方式です。(例: SharePoint(API経由)、Web検索(Bing経由))頻繁に更新される情報や、ポリシー上コピーできないデータに適しています。
Foundry IQとAzure AI Searchの関係
Foundry IQとAzure AI Searchは名前が似ていることもあり、両者の違いが気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、それぞれの役割の違いと関係について整理していきます。
Azure AI Search
Azure AI Searchは、検索機能そのものを提供するサービスです。データのインデックス作成、キーワード検索、ベクトル検索、ハイブリッド検索といった機能を備えています。
いわば「検索エンジンそのもの」であり、大量のデータを高速かつ高度に検索するための基盤と言えるでしょう。
Foundry IQ
一方、Foundry IQは、Azure AI Searchを基盤として構築された"上位の仕組み"です。
Azure AI Searchの検索能力を活用しながら、ナレッジベースという共通知識の枠組みを提供し、複数のデータソースを統合し、エージェンティック検索で質問を分解・統合し、ユーザー権限を適用した回答を生成してくれます。
つまり、Azure AI Searchが「検索エンジン」だとすれば、Foundry IQはそれを活用した「エージェント向け知識基盤」という訳です。
仕組み
実際の処理の流れも確認してみましょう。まず、エージェントがナレッジベースに「この製品の最新仕様と、過去の不具合対応履歴を教えて」といった自然な質問を送ります。
すると、以下のような流れで処理が進みます。
- ナレッジベースが質問を受け取る
- Foundry IQがどのデータを見るべきかを判断し、必要に応じて質問を分解する
- Azure AI Searchが実際の検索処理を行う
- Foundry IQが結果を整理・統合し、引用付きで返す
Foundry IQの料金
では次に、気になるFoundry IQの料金体系について見ていきましょう。
Foundry IQの料金の仕組み
まず押さえておきたいのは、Foundry IQ自体に固定料金があるわけではないという点です。
料金は、Foundry IQの内部で使われている以下のサービスの利用量に応じて発生します。
- Azure AI Search(検索エンジン部分)
- 必要に応じて、Azure OpenAI in Foundry Models(クエリプランニングや回答合成にLLMを使用する場合)
無料部分
Foundry IQの料金体系で注目しておきたいのは、次の2点です。
- 無料枠 Azure AI Searchには無料プランがあり、エージェント検索にも一定の無料トークン枠が用意されています。小規模な検証やPoCであれば、まずは無料枠の範囲内で試してみることができるでしょう。
- エージェントの"数"では課金されないこと Foundry Agent Serviceは、エージェントの数そのものでは課金されません。費用が発生するのは、エージェントが実際に検索を行ったり、AIによる推論や回答生成を行ったりした場合の利用量に応じてです。
上記の内容は、2026年3月時点の情報です。Foundry IQは現在パブリックプレビュー版のため、一般提供(GA)時に料金体系が変更される可能性があります。最新の情報については、公式ページでご確認ください。
Foundry IQの利用手順
ここからは実際にFoundry IQを利用するための基本手順として、ナレッジベースの作成方法を中心にご説明していきます。
事前準備
Foundry IQでナレッジベースを作成する前に、以下をあらかじめ用意しておくことをおすすめします。途中で新規作成することも可能ですが、事前に準備しておくとエラーや手戻りを防ぐことができます。
※リンク先は作成手順です。
- Azure AI Search
- Azure Blob Storage+コンテナ(または他データ源)
- チャットモデルとEmbedding モデル(Microsoft Foundry)
- エージェント(Microsoft Foundry)
手順
1. Foundryポータルにサインインします。

サインイン画面
2. プロジェクトを作成(または選択)します。
※ Foundry では設定はすべて「プロジェクト」単位で管理されます。

プロジェクトの作成または変更画面
3. プロジェクトに入ったら、上部メニューの[ビルド]を開きます。

ビルドボタン
4.[ナレッジ]タブをクリックします。

ナレッジタブ
5. 「ナレッジベース」をクリックします。

ナレッジベースタブ
6. ナレッジベースには検索基盤が必要です。ここで Azure AI Search を接続します。「Azure AI Searchリソース」を開き、既存の検索サービスを選択または新規作成を選びます。

Azure AI Search接続
7. 認証の種類として、①「APIキー」または「Microsoft Entra ID」を選びます。②「接続する」をクリックします。

8. 「ナレッジベースの作成」をクリックします。

ナレッジベースの作成ボタン
9. 次に、検索対象となるデータを追加します。データソースは1つずつ追加していきます。

ナレッジ選択画面
10. 今回はあらかじめAzure Blob Storageにデータを入れているので、①「Azure Blob Storage」を選択し、②「接続」をクリックします。

Azure Blob Storage選択
11. 以下の主な記載事項を入力し、「作成」をクリックします。 ・ナレッジソース名 ・ストレージアカウント ・コンテナ名 ・認証の種類

ナレッジソースの作成画面
12. ナレッジベースの作成画面に移ります。
①ナレッジベース名などの必要事項を入力し、②「ナレッジベースの保存」をクリックします。

ナレッジベースの作成画面
13. ①「ナレッジ」→②「ナレッジベース」を押すと、作成したナレッジベースが一覧に表示されていることを確認できます。

ナレッジベースの確認画面
14. 作成したナレッジベースは、エージェントを作成した際に「ナレッジ」タブから追加することができます。

エージェント画面
Foundry IQの使い方のコツ
ここからは、Foundry IQをより効果的に活用するためのコツをいくつかご紹介します。
Source Description最適化
まず初めに押さえておきたいのが、各ナレッジソースのSource Description(ソースの説明)を具体的に書くという点です。この説明文は、Foundry IQが検索時に「どのソースを優先して調べるか」を判断する材料として使われます。

ソースの説明画面
良い例 「このソースには、2020年以降のすべての製品マニュアルとトラブルシューティングガイドが含まれます。ハードウェア仕様、セットアップ手順、エラーコードの説明が記載されています。」
悪い例: 「製品情報」
このように内容を具体的に書くことで、必要なソースだけを効率よく検索できるようになります。
Retrieval Instructions活用
Retrieval Instructions(取得の指示)に自然言語でルールを書くことで、検索の仕方をカスタマイズすることもできます。
たとえば、「電気規格や安全基準に関する質問には、必ずWebソースを含めてください」「社内機密情報に関する質問には、SharePointのみを使用してください」といった指示が可能です。

Retrieval Instructions欄
検索対象の優先順位や使用するデータソースを明示的に指定できるため、回答の精度をさらに高めることが期待できます。
段階的なナレッジベース構築
最初から大規模に構築するのではなく、小さく始めて少しずつ拡張していくのがおすすめです。
まずは1〜2個の重要なデータソースだけでナレッジベースを作成し、エージェントの回答品質や動作を確認してみましょう。精度に問題がなければ、追加ソースを1つずつ増やしていきます。
この方法であれば、どのソースが結果に影響しているかを把握しやすく、問題が起きた場合でも原因を切り分けて対応しやすくなります。
Foundry IQ利用画面の注意点
最後に、Foundry IQを導入・運用する際に押さえておきたい注意点をご紹介します。
パブリックプレビューの制限
Foundry IQは、2026年3月現在 パブリックプレビュー版 です。
今後のアップデートで、機能仕様の変更、APIや設定方法の変更、管理画面(UI)の変更、挙動や制限事項の見直しといった変更が入る可能性があります。
検証や概念実証(PoC)には十分適していますが、本番の基幹業務にそのまま全面導入するかどうかは、判断が必要になります。
データソース制限
Foundry IQで利用できるデータソースは、現時点では公式にサポートされている種類に限られています。対象となるのは、Microsoft Learnに記載されている「インデックス化されたデータ」および「リモート(フェデレーテッド)データ」のソースです。
そのため、サードパーティのサービスをそのまま直接接続できるとは限りません。これらを活用したい場合は、追加の設計が必要になるケースがある点にご注意ください。
コスト管理
Foundry IQのコストは、単一の料金ではなく、利用する機能と接続サービスの組み合わせで決まります。把握しやすくするために、主に次の2点を意識しておくとよいでしょう。
- 検索の利用料金 ナレッジベースの検索処理(Azure AI Searchなど)の実行回数や規模に応じて課金されます。
- AIモデルの利用料金 検索計画や回答生成でAIモデルを使うため、トークン使用量に応じて課金されます。
まずは無料枠の範囲で小規模に検証し、コスト感をつかんでから本格導入を検討されるのがおすすめです。
まとめ
本記事では、Foundry IQの概要から主な機能、IQエコシステムにおける位置づけ、料金体系、利用手順、使い方のコツ、注意点までを幅広くご紹介しました。
Foundry IQは、AIエージェントが企業内外の知識を横断的に検索・活用するための共通基盤です。再利用可能なナレッジベースを中心に、複数のデータソースへ統一的にアクセスできる仕組みを提供しています。さらに、エージェント検索により、質問を分解・計画しながら調査と統合を行うことで、従来型RAGよりも高品質な回答が期待できます。
また、Microsoft Entra IDによるアクセス制御や機密ラベルへの対応など、エンタープライズ利用を前提としたセキュリティ設計も大きな特徴です。
今後は、こうした共通知識基盤を前提としたエージェント活用が、エンタープライズAIの標準的なアーキテクチャになっていくのではないでしょうか。
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