Azure API Managementとは?
Azure API Managementは、企業のAPI管理を一元化するMicrosoftのクラウドサービスです。このサービスを利用することで、社内外のAPIを安全かつ効率的に運用できる環境を構築できます。
近年、マイクロサービスアーキテクチャの普及やDXの推進により、企業が管理するAPIの数は急増しています。そうした中でAPI管理の複雑さに課題を感じている企業にとって、Azure API Managementは有望な選択肢となります。
Azure API Managementは、APIゲートウェイ、開発者ポータル、管理プレーンの3つのコンポーネントで構成され、APIのライフサイクル全体をサポートします。
Azure API CenterとAzure API Managementの違い
AzureにはAPI管理に関連するサービスとして「Azure API Center」も存在します。両者の違いを明確にしておきましょう。
Azure API Centerは、設計時(Design-time)のAPIガバナンスと一元的なAPI検出を目的としたサービスです。ライフサイクルの段階やデプロイ場所に関係なく、組織内のAPIをカタログとして登録・管理する「APIインベントリ」の役割を果たします。複数のAPIゲートウェイや、まだ本番稼働していない設計段階のAPIも含めて一元的に把握できる点が特徴です。
一方、Azure API Managementは実行時(Runtime)のAPIガバナンスと運用を担うサービスです。APIゲートウェイとして機能し、実際にAPIトラフィックを受け取り、認証、レート制限、キャッシュ、バックエンドへのルーティングなどを処理します。つまり、APIが稼働している状態での運用管理を主眼に置いています。
両サービスの主な違いを以下の表に整理しました。
Azure API Management | Azure API Center | |
主な役割 | 実行時のAPIゲートウェイ・運用管理 | 設計時のAPIカタログ・検出基盤 |
APIゲートウェイ機能 | あり(マネージド・セルフホステッド) | なし |
対象API | ゲートウェイで管理されるAPI | あらゆる種類のAPI(設計段階含む) |
トラフィック制御 | レート制限、クォータ、認証などを適用 | 適用なし(インベントリ管理が中心) |
API設計の品質チェック | 主目的ではない(必要に応じて設計側ツールと併用) | リンティング等で分析が可能 |
どちらを使用すべきかは、解決したい課題によって異なります。APIの実行時セキュリティやトラフィック制御が必要な場合はAzure API Managementを選択し、組織全体でAPIの散在を防ぎたい場合や設計段階からAPIを一元管理したい場合はAzure API Centerが適しています。両者は補完的な関係にあるため、併用することで設計から運用までの包括的なAPIライフサイクル管理を実現することも可能です。
次のセクションからは、Azure API Managementについて詳しく解説します。
Azure API Managementの主な機能

Azure API Management (引用:Microsoft)
Azure API Managementは、APIゲートウェイ、開発者ポータル、管理プレーンの3つの主要コンポーネントで構成されています。ここでは、それぞれの役割と具体的な機能について解説します。
APIゲートウェイによるトラフィック管理
APIゲートウェイは、すべてのクライアントアプリケーションからのリクエストを受け取り、適切なバックエンドサービスに転送する窓口(ファサード)として機能します。クライアントはバックエンドの実装詳細を意識することなく、統一されたエンドポイントを通じてAPIにアクセスできます。
具体的な機能としては、以下が挙げられます。
- API呼び出しの受け入れとバックエンドへのルーティング
- APIキー・JWTトークン・証明書などの資格情報検証
- 使用量クォータとレート制限の適用
- リクエストとレスポンスの変換
- 応答のキャッシュによる待機時間短縮
- 監視・レポート用のログ出力
ゲートウェイの種類には、Azureが管理するマネージドゲートウェイと、Kubernetesなどにデプロイできるセルフホステッドゲートウェイがあります。ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境では、セルフホステッドゲートウェイを活用することで、オンプレミス環境でも一貫したAPI管理を実現できます。
ポリシーによるAPIの動作制御
ポリシーは、APIのリクエストやレスポンスに対して順番に実行される処理ルールです。XMLベースの宣言的な構文で定義し、APIの動作を柔軟にカスタマイズできます。
主要なポリシーの種類を以下に示します。
ポリシーカテゴリ | 代表的なポリシー | 説明 |
アクセス制限 | rate-limit、quota、ip-filter | 呼び出し頻度の制限、IPアドレスによるフィルタリング |
認証・認可 | validate-jwt、validate-azure-ad-token | JWTトークンやMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)トークンの検証 |
変換 | set-header、set-body、rewrite-uri | ヘッダーの追加・変更、本文の書き換え、URLの変換 |
キャッシュ | cache-lookup、cache-store | レスポンスのキャッシュによるパフォーマンス向上 |
ポリシーは、グローバル、製品単位、API単位、操作単位など、複数のスコープで適用できます。共通のセキュリティルールをグローバルに設定し、特定のAPIにのみ追加のレート制限を適用するといった柔軟な構成が可能です。
開発者ポータルによるAPIの公開
開発者ポータルは、APIドキュメントを提供する自動生成可能なWebサイトです。APIを利用する開発者は、このポータルを通じてAPIの仕様を確認し、対話型コンソールで実際にAPIを試すことができます。
開発者ポータルの主な機能として、以下が挙げられます。
- API仕様の閲覧とダウンロード
- ブラウザ上でのAPIテスト
- アカウント作成とサブスクリプション管理
- APIキーの取得
- 個人の使用状況分析
企業ロゴやカラースキームのカスタマイズにも対応しており、自社ブランドに合わせたポータルを構築できます。Microsoft Entra IDとの連携により、既存の認証基盤を活用したシングルサインオンも実現可能です。
分析・監視機能
Azure API Managementは、Azure MonitorやApplication Insightsと連携し、APIのパフォーマンスと正常性を可視化できます。リクエスト数、レスポンス時間、エラー率などのメトリクスを監視し、問題の早期発見と対処に役立てることができます。
また、Azure OpenAIなどのAI APIを背後に置くケースでは、ゲートウェイ側でレート制限・クォータを適用しつつ、必要に応じてAzure OpenAI向けのトークン上限ポリシー(例:azure-openai-token-limit)などを併用することで、過剰利用や想定外コストの抑制に寄与します。
Azure API Managementの料金プラン
Azure API Managementでは、用途や規模に応じて複数の料金プランが用意されています。このセクションでは、Azure API Managementの料金プランについてご説明します。
大きく分けると、従来からあるClassicティア、より高速なデプロイが特徴のV2ティア、そして固定費が発生しない従量課金の3つのカテゴリがあります。
Classicティアの概要
Classicティアは、Developer、Basic、Standard、Premiumの4つのプランで構成されています。以下の表に各プランの主な特徴をまとめました。
Developer | Basic | Standard | Premium | |
目的 | 非運用ユースケースと評価 | エントリレベルの運用ユースケース | 中容量の運用ユースケース | 大容量またはエンタープライズ運用のユースケース |
料金 (ユニットごと) | $48.04/月 | $147.17/月 | $686.72/月 | $2,795.17/月<br>同じサービスインスタンスの追加ユニットの単価は最初に購入したユニットの50% |
キャッシュ (ユニットごと) | 10 MB | 50 MB | 1 GB | 5 GB |
スケールアウト (ユニット) | 1 | 2 | 4 | リージョンごとに12 |
SLA | 非対応 | 99.95% | 99.95% | 99.99% |
複数のカスタムドメイン名 | 可 | 不可 | 不可 | 可 |
開発者ポータルでのAzure Active Directory統合 | 可 | 不可 | 可 | 可 |
可用性ゾーンのサポート | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
仮想ネットワークサポート | 可 | 不可 | 不可 | 可 |
複数リージョンデプロイ | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
セルフホステッドゲートウェイ | 可 | 不可 | 不可 | 可 |
ワークスペース | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
予測最大スループット (ユニットごと) | 500要求/秒 | 1,000要求/秒 | 2,500要求/秒 | 4,000要求/秒 |
Developerプランは本番環境での使用を想定しておらず、SLAが提供されない点に注意が必要です。本番環境にはBasic以上のプランを選択してください。
V2ティアの概要
V2ティアは、より高速なプロビジョニングとスケーリングを実現する新しいプラットフォームです。Basic v2、Standard v2、Premium v2の3つのプランの比較表を以下に示します。
Basic v2 | Standard v2 | Premium v2 | |
目的 | チームとプロジェクトのAPI管理 | 組織のAPIプログラムの運用・段階的なスケーリング | エンタープライズレベルのAPIプログラムを運用 |
料金 | $150.01/月 | $700/月 | $2,801/月 |
スケールアウト (追加ユニットごと) | $150.01/月 | $500/月 | $1,401/月 |
API要求 (1 か月あたり) | 10Mを含む 1Mの追加API要求あたり$3 | 50Mを含む 1Mの追加API要求あたり$2.50 | 無制限 |
キャッシュ、組み込み (リージョンごと) | 250 MB | 1 GB | 5 GB |
SLA | 99.95% | 99.95% | 99.99% |
仮想ネットワークサポート | 非対応 | VNET 統合 | VNET 統合 VNetインジェクション |
V2ティアの主な利点として、高速なスケーリング、Standard v2以上でのVNet統合サポートなどが挙げられます。ただし、2026年1月時点では既存のClassicティアからV2ティアへの移行はできないため、新規作成が必要です。また、複数のカスタムドメイン名やセルフホステッドゲートウェイには対応していません。
従量課金の概要
従量課金プランでは、月100万API要求まで無料で利用でき、超過分は10,000要求ごとに$0.035課金されます。トラフィックが変動する小規模なAPIや、サーバーレスアーキテクチャとの相性が良い選択肢です。
ただし、開発者ポータルが利用できない、仮想ネットワークサポートがないなどの制約があるため、要件に合致するか事前に確認することを推奨します。
Azure API Managementは、東日本、西日本をはじめとする主要リージョンで利用可能ですが、V2ティアとPremiumプランのワークスペースは一部リージョンに限定されます。以下に利用可能なリージョンの一部を示します。
Basic v2 | Standard v2 | Premium v2 | ワークスペースゲートウェイ (Premium) | |
東日本 | 〇 | 〇 | 〇 | |
東アジア | 〇 | 〇 | 〇 | |
米国東部 | 〇 | 〇 | ||
米国東部2 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
米国中部 | 〇 | 〇 | ||
米国西部 | 〇 | 〇 | 〇 | |
米国西部2 | 〇 | 〇 |
上記の内容は2026年2月時点の情報です。最新情報は、Azure API Management公式料金表をご覧ください。
Azure API Managementの利用手順
それでは、実際にAzure API Managementを利用する手順をご説明します。ここでは、サービスインスタンスの作成から最初のAPIを公開するまでの流れを解説します。
Azure API Managementを利用するには、有効なAzureサブスクリプション(無料アカウントも可)が必要です。
また、Azureリソースをまとめて管理するためのリソースグループを事前に作成しておくと、後の管理が容易になります。
1. Azure Portalにアクセス
Azure Portalにサインインし、上部の検索バーから「API Management」を検索して選択します。「作成」をクリックし、必要な情報を入力しましょう。

Azure Portalにアクセス
2.APIのインポート
インスタンスが作成されたら、バックエンドAPIをインポートして公開します。サイドバーの「API」から「Add API」を選択しましょう。APIの種類を選択し、必要な情報を入力してインポートを完了します。

APIのインポート
3. インポートが完了すると、Azure Portal上でAPIの設定と操作を確認・編集できます。「Test」タブからリクエストを送信し、バックエンドへの接続とレスポンスを確認することで、正常に動作しているか検証することも可能です。

APIの設定と操作
4. 開発者ポータルの有効化
開発者ポータルを有効化するには、「Developer portal」メニューから「Portal overview」を開き、「Publish」を選択します。

開発者ポータルの有効化 (引用:Microsoft)
管理者としてポータルにアクセスし、ロゴ、色、ページ構成などをカスタマイズできます。
左側のメニューセクションでは、ページ、メディア、レイアウト、メニュー、スタイル、Web サイトの設定を変更できます。上部タブでは、ビューポートを切り替えるか、異なるユーザーに表示されるポータルの要素を編集可能です。

開発者ポータルのカスタマイズ (引用:Microsoft)
上記のステップで、Azure API Managementを利用し、APIを管理することが可能です。より詳細な利用手順は、Azure API Management公式ドキュメントをご覧ください。
Azure API Managementの使い方のコツ
このセクションでは、Azure API Managementを効果的に活用するためのベストプラクティスをご紹介します。
パフォーマンス最適化のアプローチ
パフォーマンスを向上させるためには、組み込みキャッシュの活用が有効です。頻繁にアクセスされるAPIレスポンスをキャッシュすることで、バックエンドへの負荷を軽減し、レスポンス時間を短縮できます。
また、バックエンドリソースにサーキットブレーカーや負荷分散を構成することで、障害発生時の影響を最小限に抑えられます。ユニット数の調整については、Standardの1ユニットで約2,500 RPS、Premiumで約4,000 RPSを処理できることを目安に計画を立てましょう(あくまで推定値であり、保証値ではありません)。
セキュリティ強化の推奨事項
セキュリティ面では、OAuth 2.0認証を採用することを推奨します。サブスクリプションキーのみに依存せず、JWTトークンの検証(validate-jwtポリシー)を組み合わせることで、より堅牢な認証基盤を構築できます。
さらに、VNet統合が可能なプランを選択し、Azure API Managementを仮想ネットワーク内にデプロイすることで、ネットワークレベルでのセキュリティを強化できます。
監視・運用の効率化
Azure MonitorとApplication Insightsを連携させることで、APIのパフォーマンスメトリクスを監視する体制を構築可能です。監視対象として、レート制限・クォータ違反の発生頻度、HTTPステータスコードに基づくエラー率、リクエスト処理時間、ゲートウェイのリソース使用率などを設定できます。
運用面では、ARM テンプレートやBicep、Terraformを使用してインフラを管理することを推奨します。ポータルでの手動操作に依存しない運用により、構成の再現性と変更追跡が容易になります。
Azure API Managementの活用シーン
Azure API Managementは、さまざまな業務シーンでの活用が期待できます。ここでは、代表的なユースケースをご紹介します。
マイクロサービスアーキテクチャでの統合
複数のマイクロサービスで構成されるシステムでは、各サービスが独自のAPIエンドポイントを持つためクライアントアプリケーションの実装が複雑になりがちです。Azure API Managementを導入することで、すべてのマイクロサービスを統一されたエンドポイントで公開し、クライアントとバックエンドの結合の課題を解消できます。
たとえば、オンラインストアシステムで注文、商品、配送の各マイクロサービスをAzure Functionsで実装し、Azure API Managementで統合するケースが挙げられます。認証やレート制限などの共通ルールを一元的に適用でき、バックエンドサービスの変更がクライアントに影響を与えない設計が実現します。
レガシーシステムのモダナイゼーション
既存のWebサービスをRESTful APIとして公開し直すケースでも、Azure API Managementは有効です。WSDLからAPIをインポートし、ポリシーを使用してXMLからJSONへの変換やURLの書き換えを行うことで、バックエンドのコードを変更せずに新しいAPIとして再公開できます。
セルフホステッドゲートウェイを活用すれば、オンプレミス環境に残るレガシーシステムに対しても、クラウドと同じAPI管理ポリシーを適用できます。段階的なクラウド移行を進める企業にとって、有効なアプローチといえます。
パートナー・外部開発者に向けたAPI公開
自社のサービスをAPIとして外部パートナーや開発者に公開するケースでは、開発者ポータルが重要な役割を果たします。開発者ポータルを通じて、外部の開発者はAPIドキュメントを確認し、サンドボックス環境でAPIを試すことができます。Product機能を使用して、異なるアクセスレベルのAPI製品を複数用意することも可能です。たとえば、無料プランでは1日あたりのリクエスト数を制限し、有料プランではより多くのリクエストと追加機能を提供するといった構成が実現できます。
Azure API Managementの注意点
最後に、Azure API Managementを導入する際に把握しておくべき制限事項と注意点を3点解説します。
スループットに関する考慮事項
公開されているスループット数値(Standardで約2,500 RPS/ユニット、Premiumで約4,000 RPS/ユニット)は推定最大値であり、実際のスループットはリクエストとレスポンスのサイズ、ポリシーの複雑さ、バックエンドのレイテンシなどによって大きく変動します。本番稼働前には、Azure Load Testingなどの負荷テストで実際のスループットを検証することを推奨します。
レート制限ポリシーについても、分散アーキテクチャの特性上、完全に正確ではない点に留意しましょう。短期間に多数のリクエストが集中した場合、設定した制限値を超過することがあります。
構成変更時の反映時間
カスタムドメイン、証明書、スケーリング、VNet設定、可用性ゾーン、リージョン追加などのインフラ変更は、反映に時間がかかる場合があります。
計画的なメンテナンスウィンドウを設けて作業を行いましょう。一方、APIの定義変更やポリシーの更新は比較的短時間で反映されます。
セキュリティ上の注意事項
APIレスポンスに、実装詳細を漏らすHTTPヘッダー(サーバーバージョン情報など)が含まれていないか確認し、必要に応じてset-headerポリシーで削除することが推奨されます。
本番環境では、デバッグ用のリクエストトレース機能を無効化することも重要です。トレースログには機密データが含まれる可能性があるため注意しましょう。
まとめ
本記事では、Azure API Managementの基本的な機能、料金プラン、利用手順、活用シーン、注意点について詳しく解説しました。Azure API Managementは、APIの一元管理、セキュリティ強化、パフォーマンス最適化を実現するためのサービスです。特に、APIゲートウェイ、ポリシーによる動作制御、開発者ポータル、分析・監視機能を活用することで、APIのライフサイクル全体を効率的に管理できます。Azure API Managementを導入することで、API管理の複雑さを軽減し、ビジネスの成長を支える堅牢な基盤を構築できるでしょう。
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