東京エレクトロンデバイス株式会社

Microsoft Azureコラム

2026/07/10

Writer: 手戸 蒼唯(てど あおい)

Azure SRE Agentとは?AIがインシデント対応を自動化する次世代の運用支援サービスを解説

クラウドネイティブなアプリケーションの運用において、インシデントの迅速な検知と解決はビジネス継続性の鍵を握ります。Microsoftが提供する「Azure SRE Agent」は、この課題に対し、AIを活用して運用環境の問題を診断・解決し、インシデント対応の平均解決時間(MTTR)を短縮することを目的とした、サイト信頼性アシスタントサービスです。


本記事では、Azure SRE Agentの基本的な役割から、具体的な利用シーン、設定手順、そして障害復旧の実践的なチュートリアルまでを網羅的に解説します。


自然言語での対話を通じて、根本原因分析から修復ワークフローの実行までをAIが支援する、次世代の運用管理に関心のある方にとって、本記事がその導入検討の一助となれば幸いです。


東京エレクトロンデバイスは、Azure SRE AgentをはじめとするAzureの運用管理・自動化ソリューションの導入を支援しています。

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Azure SRE エージェントとは?

Azure SRE エージェントとは、AIを活用し、システムの監視、インシデント対応、根本原因分析を自動化するMicrosoft Azureのサービスです。

サイト信頼性エンジニアリングSRE)の原則をAzure環境に適用することを目的に設計されており、システムの信頼性を維持しながら、開発者や運用チームの手動介入を減らし、アラート対応を軽減します。


このサービスは、単なる自動化ツールではなく、人間と対話しながら問題解決を支援する協調型のAIエージェントとして機能します。予期せぬ問題に対して自律的にデータを分析し、複数の情報源から得た知見を統合して、人間が理解できる形で解決策を提示することが可能です。


そもそもSREとは?

SREとは、Googleが提唱したプラクティスで、ソフトウェアエンジニアリングの原則を、インフラストラクチャと運用の問題に適用するというアプローチです。

従来の運用チームが手作業で行っていたタスクを、ソフトウェアを開発して自動化し、信頼性とスケーラビリティを確保することを目指します。


SREの基本原則は以下の通りです。

  • 開発速度と信頼性の両立:SREは、新機能の迅速なリリースと、サービスの安定稼働という、時に相反する目標のバランスを取ることを目指します。
  • 定量的な目標設定:サービスの信頼性を客観的に測定し、管理するために、具体的な指標を用います。
    • SLI(Service Level Indicator、サービスレベル指標):レイテンシや可用性など、サービスの特定の側面を定量的に示す指標です。
    • SLO(Service Level Objective、サービスレベル目標):SLIに基づいて設定される、信頼性の具体的な目標値です。
    • エラーバジェット:「100% - SLO」 で算出される、許容できる不信頼性の量です。
  • トイルの削減:トイルとは、反復的、自動化可能であり、長期的な価値を生まない作業を指します。SREの重要な目標の一つは、このトイルを自動化し、エンジニアがより価値の高い作業に時間を使えるようにすることです。


Azure SRE エージェントの主な機能

Azure SRE エージェント.png

Azure SRE エージェントのイメージ ( 参考:Azure SRE エージェント プレビューにヘルプを依頼する)


Azure SRE エージェントは、インシデントのライフサイクル全体をカバーする、AIを駆使した多様な機能を提供します。


以下に、Azure SRE エージェントの主要な機能を示します。

  • インシデントの自動化:Azure Monitorやサードパーティ製のインシデント管理ツールからのアラートに自動で応答し、初期分析と診断を実行します。
  • 説明可能な根本原因分析RCA):メトリクス、ログ、トレース、デプロイ履歴といった複数のデータを相互に関連付け、問題の根本原因の可能性を提示します。ソースコードリポジトリと連携すれば、コードの差分まで特定可能です。
  • 自然言語による対話:チャットインターフェースを通じて、平易な英語で質問やコマンドを発行することで、システムの健全性やパフォーマンスを調査できます。
  • プロアクティブな監視と分析:リソースを継続的に監視し、日々の健全性サマリーを送信します。CPUやメモリ使用量の急増といった異常を検知し、セキュリティのベストプラクティスに準拠していないリソースを特定します。
  • 自動化された軽減策:リソースのスケールアップ、アプリケーションの再起動、デプロイのロールバックといった問題の軽減策を提案します。既定では実行前に人間の承認が必要ですが、事前に許可した範囲に限って自動実行させる Autonomous モード を有効化することもできます。
  • 開発作業項目の作成:調査完了後、インシデントの詳細情報(再現手順、ログなど)を含んだ作業項目をGitHubやAzure DevOpsに自動で作成し、開発チームとの連携を円滑にします。


Azure SRE エージェントは、複雑で時間のかかるデータ収集と相関分析のプロセスを自動化します。多様なデータソースから情報を統合し、「このデプロイが原因でこのエラーが発生し、その結果としてこのメトリクスが悪化した」というような、一貫性のあるストーリーとして根本原因を提示します。


これにより、インシデント対応の初動段階を高速化し、エンジニアの負担を軽減します。


Azure SRE エージェントの料金

Azure SRE エージェントの料金は、Azure エージェント ユニット(Azure Agent Unit, AAU) を基準とした従量課金で決まります。
コストは大きく分けて「常時監視のためのベースコスト」と「インシデント対応など、実際にエージェントが動いた分」の 2 要素で構成されます。

  • 常時オンで環境をウォッチし続けるための 固定費
  • インシデント調査や軽減策の実行など、エージェントがタスクを実行している時間に応じた 変動費


課金モデルと AAU 消費量

AAU 自体の消費量ルールはリージョン共通で、現時点では次のように定義されています。

価格コンポーネント

説明

AAU消費量の目安

固定費(常時オン フロー)

エージェントがバックグラウンドで監視・学習を続けるためのコスト

1 エージェントあたり 1 時間につき 4 AAU

使用量ベースの変動費(アクティブ フロー)

インシデント対応やスケーリングなど、エージェントがタスクを実行している時間に対するコスト

エージェント タスク 1 秒あたり 0.25 AAU

実際に請求される金額は、これらの AAU 消費量に、利用リージョンごとに設定されている「AAU あたりの価格」を掛け合わせて算出されます。


米国東部リージョンの料金例(2025年12月時点)

たとえば、米国東部(East US 2)リージョンでは、2025年12月時点で 1 AAU あたり 0.10ドル と公開されています。
この前提に基づくと、料金のイメージは次のとおりです。

  • ベースライン(常時オン フロー)
    4 AAU / 時間 × 0.10ドル = エージェント 1 時間あたり 0.40ドル
  • アクティブ フロー(使用量ベースの変動費)
    0.25 AAU / 秒 × 0.10ドル = エージェントタスク 1 秒あたり 0.025ドル

※上記の内容は、本記事執筆時点(2025年12月時点)の情報に基づいています。
料金や対応リージョンは今後変更される可能性があるため、最新の内容は Azure SRE エージェントの公式ドキュメントおよび 料金ページ でご確認ください。


Azure SRE エージェントの利用手順

それでは、実際にAzure SRE エージェントを利用する手順をご説明します。


1.Azure portalにアクセス

Microsoft.Authorization/roleAssignments/write権限または、ユーザーアクセス管理者の権限を持ったアカウントでAzure portalにサインインします。

Azure portalにアクセス.png

Azure portalにアクセス


2.Azure SRE エージェントにアクセス

上部の検索バーに「Azure SRE Agent」と入力し、「Azure SRE Agent (Preview)」を選択します。

Azure SRE エージェントにアクセス.png

Azure SRE エージェントにアクセス


3.エージェントの作成

「Create an agent」をクリックし、エージェントを作成しましょう。監視対象のリソースグループやエージェントに付与する権限を選択します。

エージェントの作成.png

エージェントの作成


4.スレッドの作成

デプロイが完了すると、エージェントが起動します。「新しいチャットスレッド」を選択することでエージェントとの対話を開始できます。


スレッドの作成.png

スレッドの作成


Azure SRE エージェントの活用デモ

このセクションでは、Azure Container Appsのトラブルシューティングデモを行います。

まずは上記のステップに沿ってAzure SRE エージェントを作成します。

続いて、Azure portalから「コンテナーアプリ」を作成します。


コンテナーアプリの作成.png

コンテナーアプリの作成


「コンテナーの編集」から「イメージとタグ」に不要な文字列を追加します。これにより、コンテナーアプリは正常な操作ができなくなりました。

Azure SRE エージェントに移動し、チャットボックスで、以下のように指示します。

入力項目:「What's wrong with my container app?」

Azure SRE エージェントの応答.png

Azure SRE エージェントの応答


上記のような応答が返されました。実際にロールバックを指示するプロンプトを送信し、ロールバックを承認することで、エージェントは復旧処理まで代行することができます。


Azure SRE エージェントの使い方のコツ

Azure SRE エージェントは有用なサービスですが、効果的に活用するためには、いくつかのコツとベストプラクティスを理解しておくことが重要です。ここでは、エージェントをより効果的に、かつ安全に活用するためのポイントをご説明します。

効果的なプロンプトを作成する

エージェントとの対話は自然言語で行われるため、質問の仕方が得られる回答の質を大きく左右します。明確で具体的なプロンプトを心がけることが重要です。

以下に、効果的なプロンプトの例を挙げます 。

  • 全体的な健全性の確認:Which resources are unhealthy?(どのリソースが不健康ですか?)
  • 特定リソースの調査:What changed in my web app last week?(先週、私のウェブアプリに何が変わりましたか?)
  • メトリクスの取得:Can you get me the CPU and memory utilization of my app?(私のアプリのCPUとメモリ使用率を取得できますか?)
  • データの可視化:Visualize requests and 500 errors for last week for my app.(先週の私のアプリのリクエスト数と500エラーを可視化してください。)


RBACの活用によるガバナンス強化

Azureのロールベースアクセス制御(RBAC)を活用して、最小権限の原則を徹底することが不可欠です。

エージェントには以下のような専用のロールが用意されています。

  • SRE Agent Admin:管理者向けのロールです。エージェントの構成変更や、リソースへの変更を伴う軽減策の承認が可能です。
  • SRE Agent Standard User:一般的な運用担当者向けのロールです。インシデントの調査や診断のためにエージェントと対話できますが、変更の承認はできません。
  • SRE Agent Reader:監査担当者向けの読み取り専用ロールです。対話はできず、エージェントの活動履歴の閲覧のみ可能です。


これらのロールをユーザーの職務に応じて適切に割り当てることで、意図しない変更を防ぎ、安全な運用体制を構築できます。


既存ワークフローへの統合

エージェントをスタンドアロンのツールとして使うのではなく、チームが既に使用しているツールチェーンに組み込むことで、その効果が高まります。

GitHubやAzure DevOpsに接続することで、エージェントはデプロイ情報とコードの変更を直接関連付けて分析できるようになり、根本原因の特定精度が向上します。


また、調査結果を自動でIssueとして起票し、開発チームへのフィードバックループを高速化できます。

エージェントをチームの新しいメンバーのように捉えて明確な指示を与え、その分析を信頼しつつも最終的な判断は人間が下すという、新しい協調関係を築くことが、成功への鍵となります。


Azure SRE エージェントの活用シーン

Azure SRE エージェントの適用範囲は広く、多様なシナリオでその価値を発揮します。ここでは、具体的な活用シーンをいくつかご紹介します。

24時間365日稼働する本番サービス自動監視

エージェントは、人間のオペレーターのように疲れたり、注意が散漫になったりすることはありません。本番環境で稼働するウェブサイトやアプリケーションを24時間365日体制で継続的に監視します。

深夜や休日にCPU使用率の急増やメモリリークの兆候といった異常を検知すると、即座に自己判断で初期調査を開始します。これにより、問題が深刻化する前に早期発見し、担当者が対応を開始する時点ですでに初期分析が完了している状態を作り出すことができます。


プロアクティブなパフォーマンスとセキュリティの最適化

インシデント発生後の事後対応だけでなく、問題の発生を未然に防ぐプロアクティブな活動にもエージェントは有効です。定期的に環境をスキャンし、Azureのベストプラクティスに準拠していない設定を特定し、修正を提案します。

これにより、システムの信頼性、セキュリティ、パフォーマンスを継続的に改善できます。


根本原因のコードレベルでの特定

アプリケーションのパフォーマンス問題において、エージェントはコードレベルでの分析能力を発揮します。

例えば、応答時間が悪化している問題に対して、インフラ層のメトリクスだけでなく、アプリケーションのプロファイルデータやメモリダンプを分析します。その結果、「特定のLINQクエリが非効率で、大量のオブジェクトを生成している」といったように、問題の原因となっているコードの具体的な箇所まで特定し、改善案を提示することが可能です。


また、非効率なコードを修正することは、CPUやメモリの無駄な消費を抑え、結果としてクラウドの利用料金を削減することに繋がります。Azure SRE エージェントは、SRE(信頼性)とFinOps(コスト最適化)という2つの領域を橋渡しする役割も担うことが期待されます。


Azure SRE エージェント利用時の注意点

Azure SRE エージェントの導入を検討する際には、現在のステータスやいくつかの制約事項、そして運用上の注意点を理解しておく必要があります。ここでは、主な注意点と考慮事項をご説明します。

プレビュー段階

本サービスは現在パブリックプレビューとして提供されています。これは、機能、料金、利用可能なリージョンなどが一般提供版とは異なる可能性があり、将来的に変更されることを意味します。最新の情報は、Azure SRE エージェントの公式ドキュメントをご確認ください。


承認の必須性

エージェントは、リソースの再起動や設定変更といった修正措置を、既定では自律的に実行しません。
標準の Review モード では、提案されたすべてのアクションは、適切な権限を持つユーザーによる明示的な承認を必要とします。

一方で、あらかじめ許可した範囲の軽減策については、Autonomous モード を有効化することで自動実行させることもできます。その場合でも、どのアクションを自動化するかは事前にチーム側で慎重に設計する必要があります。


潜在的な設定課題

エージェントの作成時に、ユーザーアカウントの権限不足、サブスクリプションに設定されたリージョン制限ポリシー、またはファイアウォールが「*.azuresre.ai」ドメインへのアクセスをブロックしていることなどが原因で、設定が失敗する場合があります。


まとめ

本記事では、Azure SRE エージェントの基本的な役割、主な機能、利用手順、活用シーン、そして注意点について詳しく解説しました。Azure SRE エージェントは、AIを活用してインシデント対応を自動化し、システムの信頼性を向上させる運用管理ツールです。

このエージェントを活用することで、インシデント対応の迅速化、運用負荷の軽減、そしてプロアクティブなシステム最適化が可能になります。ただし、プレビュー段階であることや、アクションに対してどこまで自動実行を許可するかを慎重に設計する必要がある点を考慮し、適切な運用体制を整えることが重要です。

Azure SRE エージェントを導入することで、信頼性と効率性を両立した運用管理を実現し、より高いビジネス価値を引き出すことが期待されます。

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